改訂新版 世界大百科事典 「金属霧」の意味・わかりやすい解説
金属霧 (きんぞくむ)
metal fog
金属と溶融塩が接した系をある温度以上にすると,金属が溶融塩に溶解分散して着色した均一の液体を生ずることがある。このように金属が溶融塩に溶解分散して生じたものを金属霧という。金属霧の本質については,(1)Ca+CaCl2⇄2CaClのように金属と溶融塩とが反応して生成した低原子価化合物であるとする説,(2)金属コロイドであるとする説,(3)(Pb)n+PbCl2⇄(Pb)nPbCl2のように金属と溶媒とが結合して生成した錯化合物であるとする説,などがあり,いずれの説が正しいのかまだはっきりしていない。いずれにせよ,金属霧は金属が溶解分散したものなので反応性に富む。溶融塩電解の際に金属霧が発生すると,陽極あるいは浴表面で酸化されて電流効率の低下を招く。そのため,金属霧の発生を防ぐ目的で,溶融塩の組成を変えたり温度を下げたりする手段がとられる。
執筆者:笛木 和雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報