日本大百科全書(ニッポニカ) 「金排除政策」の意味・わかりやすい解説
金排除政策
きんはいじょせいさく
gold exclusion policy
金本位国に一時的に大量の金が流入してインフレーションが激化するおそれがあるとき、その流入を防止する政策をいう。具体的には、中央銀行による金買入れ義務の免除、金の自由鋳造の停止、あるいは金の輸入禁止などから構成されている。しかし、中央銀行が金の買入れを全面的に拒否するのはごくまれなことであり、むしろ法定価格以下の安い価格で購入することを可能にするためのものといってよいであろう。
金排除政策が採用された代表的な例としては、第一次世界大戦当時のスウェーデン、ノルウェー、デンマークなど北欧諸国の場合があげられる。これらの国々は第一次世界大戦のときに中立を維持していたため、交戦国からの物資買付けや海運収入が急増し、大量の金が流入した。そこで経済的動揺が発生するのを防ぐため、スウェーデンは1916年2月、中央銀行の法定価格による金買入れ義務を免除し、さらに同年4月、金貨の自由鋳造を停止した。ノルウェーやデンマークもこれに倣った。しかし、実際には中央銀行は法定価格より安い価格で金を買い入れたので、金の保有量は増大した。
なお、同様な状況下でとられる政策に金不胎化(ふたいか)政策があるが、それとの相違は、金排除政策が金本位制の本質的な機能を停止させるのに対し、金不胎化政策は金本位制下で通貨当局の守るべき「ゲームのルール」を破るという点にある。
[原 信]