日本大百科全書(ニッポニカ) 「金笠」の意味・わかりやすい解説
金笠
きんりゅう / キムサッカ
(1807―1863)
朝鮮、李朝(りちょう)の詩人。本名は金炳淵(へいえん)。笠(サッカ)をかぶり全国を流浪したので金(キム)サッカとよばれる。彼の詩は、ときに朝鮮文字を交えたり、音と訓を巧みに使い分けたり、懸詞(かけことば)を駆使したりして、表面的な意味と裏にある真実の意味とを対比させたりした破格の漢詩が多く、内容的には両班(ヤンバン)階級と世俗的権威を嘲笑(ちょうしょう)し、民衆の貧しい生活をユーモア交じりに嘆いた作品が多い。いまでも朝鮮南北の民衆に親しまれ、なかば伝説化されている詩人である。李応洙(りおうしゅ)編『金笠詩集』(1941)がある。
[大村益夫]
『今村与志雄著『歴史と文学の諸相』(1976・勁草書房)』