日本大百科全書(ニッポニカ) 「金融活動指標」の意味・わかりやすい解説
金融活動指標
きんゆうかつどうしひょう
バブル経済の発生の可能性を事前に察知するための指標。日本銀行(日銀)が開発し、2012年(平成24)から年2回、日銀の金融システムレポートに盛り込む形で公表している。経済や株価、土地などの不動産価格が行き過ぎた動き(バブル)をしていないかをいち早くとらえ、予防的な政策につなげるねらいがある。当初、金融活動指標は10の経済指標で構成されたが、2014年に14指標に変更された。変更にあたって日銀は1987年(昭和62)~1990年(平成2)のバブル経済を察知できたか、「危機を見逃すリスク」や「間違った警報を鳴らしてしまうリスク」を小さくできるかといった観点を重視。おもな指標として、金融では「総与信・GDP(国内総生産)比率」「金融機関の貸出態度判断DI」、株価では「東証株価指数(TOPIX(トピックス))」「株式信用買残(かいざん)の対信用売残(うりざん)比率」、不動産では「地価(6大都市・全用途平均)の対GDP比率」「不動産業実物投資の対GDP比率」、設備投資では「企業設備投資の対GDP比率」、家計では「家計投資の対可処分所得比率」「家計向け貸出の対GDP比率」などが採用されている。各指標が過去のトレンドからどの程度乖離(かいり)しているかを観察することで、経済・金融活動の過熱や停滞の警報サインを出す。各指標の状況を過熱なら「赤色」、停滞なら「青色」などと色で表現した「ヒートマップ」を作成することで、視覚的にバブルの兆候をとらえやすくしている。
なお日銀以外にもアメリカ、イギリス、スイスなどの中央銀行が「総与信・GDP比率」などの経済指標を参照指標として採用するなど、主要国は金融活動指標と同様な指標を保有している。なお金融活動指標の採用指標変更について、日銀が株価の変動帯域を広げたため、株価の過熱サインが出にくくなったとの批判が市場関係者から出ている。また金融活動指標の公表が半年ごとと公表期間があいているため、個人投資家などからは同指標を活用しにくいとの指摘もある。
[矢野 武 2018年6月19日]