改訂新版 世界大百科事典 「鉄道敷設法」の意味・わかりやすい解説
鉄道敷設法 (てつどうふせつほう)
日本に将来建設すべき鉄道路線を定めた法律で,1892年に制定された。1889年に新橋~神戸間の東海道本線が明治政府の手によって完成する一方で,財源難の政府に代わって民間資金による鉄道建設が各地で盛んに行われたが,経営不振で政府に買上げを望むところもあった。鉄道庁長官井上勝が91年7月〈鉄道政略ニ関スル議〉を建議し,政府も民営鉄道を買い上げて幹線鉄道網を形成する基本方針を固めた。そこで92年6月,鉄道敷設法を制定し,鉄道建設の基本法とした。さらに1906年には鉄道国有法を制定し,これによって幹線鉄道網が形成されたが,地方における支線鉄道の建設要請は,大正時代に入るとますます高まった。地元の利害の調整を図るために,22年4月,この法律を全面改正し,全国で178線,1万0220kmの建設予定線を新たに定めた。ただし,財源,着手・完成期限,建設順位については何も規定しなかったので,その後も建設計画はしばしば政争の具に供されることとなった。この法律は87年の国鉄改革にあたり廃止された。
執筆者:鈴木 順一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報