長生殿(菓子)(読み)ちょうせいでん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「長生殿(菓子)」の意味・わかりやすい解説

長生殿(菓子)
ちょうせいでん

落雁(らくがん)の最高級品とされる金沢名物。石川県金沢市の老舗(しにせ)森八(もりはち)の名代菓子でもある。森八の始祖森下八左衛門が、縁者の大隅鉄斎に勧められて、越中(えっちゅう)井波御所落雁を改良、1625年(寛永2)につくりあげた。江戸・本郷藤村(ふじむら)羊かんとともに加賀百万石を代表する菓子として、今日に名声を伝えてきた。御所落雁のごまのかわりに浪花(なにわ)の本紅(べに)、甘味には堺(さかい)から取り寄せた砂糖を用い、加賀糯米(もちごめ)を使って紅白に打ちわけ、桃山風の華やかさを表現した。唐墨を模した典雅な姿は3代藩主前田利常(としつね)の考案、篆書(てんしょ)体の長生殿小堀遠州の筆になる。江戸後期品質の優れた阿波(あわ)和三盆(砂糖の一種)が完成、これを用いていっそう華麗な打菓子となった。

[沢 史生

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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