サトウキビの搾り汁を煮つめてつくった半固形状、あるいは微結晶粒子の混ざった半流動の白下糖(しろしたとう)に、水を加えて昔ながらの製法で圧搾することを繰り返してつくった砂糖。色は淡黄色で、結晶はたいへん細かい。独特の風味をもち、高級和菓子の原料に用いられる。三盆白、和白ともいう。和三盆が初めてつくられたのは江戸時代である。8代将軍徳川吉宗(よしむね)が製糖を奨励したとき、四国で成功したのがこれである。いまも主として香川県、徳島県でつくられている。三盆の語源については、昔、中国で、精白のために盆(土製の鉢)の上で3回もんだからとか、製法を伝えた中国人の官位三品(さんぼん)に由来するなどの説がある。和三盆の名称は、中国輸入の三盆白などの砂糖に対する和製の意である。
製法は、まず甘蔗(かんしょ)(サトウキビ)から糖液を搾り、これを加熱濃縮(白下糖)する。これを麻布の袋に包み、何個も重ねて木枠に入れ、圧縮して糖蜜分を搾り分ける。袋の中の砂糖は取り出して、少量の水を加えてよくもみ、ふたたび麻袋に入れて圧搾する。これを5、6回行うと、粒子の細かい白い砂糖がとれる。
[河野友美・大滝 緑]
国産砂糖は1726年(享保11)、徳川吉宗が諸藩にサトウキビの苗を配付、栽培を奨励して以来、研究が始められた。しかし実際には薩摩(さつま)藩が黒糖を生産していたほかはみるべき成果があがらなかった。それから42年後の1768年(明和5)、池上幸豊(ゆきとよ)が少量ながら讃岐(さぬき)和三盆の製造に成功、ついで1790年(寛政2)に向山周慶(さきやましゅうけい)が数十斤の讃岐和三盆の製造を記録した。一方、阿波(あわ)和三盆の祖といわれる丸山徳彌(とくや)は、1776年(安永5)と1792年(寛政4)の両度にわたり日向(ひゅうが)国(宮崎県)に単身赴いて製糖技術を身につけた。その結果、成功を収めたのが阿波和三盆で、1805年(文化2)のことであった。
普通、白砂糖は、白下糖とよばれるショ糖結晶と蜜(みつ)分の混合物から、遠心分離で蜜分を除去したもので、これを三盆白または三盆というが、盆菓子づくりに用いる場合、白下糖から十分に蜜分を除かない状態のものが珍重される。やや黄色味を帯びた和三盆糖は京都の長久堂の「きぬた」、鶴屋吉信(つるやよしのぶ)の「柚餅(ゆもち)」、徳島市の富士屋の「小男鹿(さおしか)」、石川県金沢の「長生殿」など名品に使われている。和三盆だけを用いた打ち菓子に、京都、名古屋の亀末広(かめすえひろ)の「お千代宝(ちよぼう)」、名古屋の両口屋の「二人静(ににんしずか)」、徳島市の富士屋の「和三盆」などがあり、名品として知られる。
[沢 史生・大滝 緑]
徳島県,香川県など四国地方で家内工業的に生産されている砂糖で,やや黄色みをおびた白色無光沢の微細結晶からなる。製法の特徴は,サトウキビの搾汁を濃縮した白下糖を布袋に入れて押槽(おしふね)に入れ,圧搾して蜜をしぼり出す。翌日,砂糖をとり出して,研ぎ槽という長方形のわく台の上で手でよく砕きもみ,少量の水を加えてすり合わせ,練り上げる。このような操作を5回くりかえして製造される。産地を付した阿波三盆,讃岐三盆白などが歴史的にも有名である。和三盆は一種独特の風味を有し,細かい粒子が適当な粘性をもっており,煮沸すれば適当な粘性を示す。各種の和菓子原料として用いられ,押物,干菓子,あん,ようかんなどには必須の砂糖である。成分の平均的な分析値は,糖度98.21%,還元糖0.34%,水分0.35%,灰分0.70%である。和三盆は含蜜糖であるので,微量に残っているショ糖以外の成分が,特有の風味に関係している。生産量はひじょうに少ない。
執筆者:貝沼 圭二
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…徳島平野中央部,吉野川北岸に位置し,讃岐山脈南斜面と,泉谷川などにより形成された扇状地,宮川内谷川と吉野川の沖積平野の3地域からなる。古くからサトウキビの栽培が盛んで,精製された砂糖は〈和三盆(わさんぼん)〉とよばれ,アイと並ぶ阿波の特産として全国に知られた。現在も全国各地の銘菓の原料として珍重される。…
…新しいタイプの砂糖である。 (11)和三盆 日本の伝統的な製法で作る淡い卵色の砂糖で,結晶がひじょうに細かく,特有の風味をもつので和菓子の原料として使われる。徳島県,香川県が産地として有名である。…
…また,木型に詰めて押し固めるものを打物(うちもの)と呼び,さらにその中の上級品を打物,他を落雁とする呼び方もある。打物の一種に和三盆(わさんぼん)と通称されるものがある。和三盆は日本国内産の白砂糖のことで,この菓子は独特の香味をもつ砂糖の和三盆に少量の補助材料を加えて,ごく小型のものにつくられている。…
※「和三盆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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