長老政治(読み)ちょうろうせいじ(その他表記)gerontocracy

翻訳|gerontocracy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「長老政治」の意味・わかりやすい解説

長老政治
ちょうろうせいじ
gerontocracy

長老,年寄り衆が合議により,政治や軍事を運営すること。長老が呪術宗教儀礼を実修する権利,宣戦講和,裁判,調停などの権利を有する制度を広い意味の長老制という。年齢階梯制が顕著な社会では,年齢の上昇はとりもなおさず社会的・霊的地位の上昇でもあるため,長老制は年齢階梯制を随伴することが多い。東アフリカのマサイ族ナンディ族では,幼年期後は男性は年齢に応じて若い戦士,年長戦士,中老,長老という一連の階梯に分けられ,長老は争いを解決し,重要な公事を決定し,祖先の霊と交流する。またコートジボアール北部のングワト族では,集落の行政は長老衆によって行われるが,これらの集落連合を統治するのは首長である。このように長老衆が大規模な政治権力を把握することはまれで,むしろ長老会議として王や首長の相談役を果し,あるいは王の地位の継承に際して管理,調停を行うことが多い。こうした制度はアフリカのタレンシ族バンツー語系諸族に見出せる。このほか,オセアニア,若干のアジア地域などでもみることができるが,これらは集落単位の小規模なものである。祭祀儀礼に大きく傾斜したものとして,日本民俗社会にみられる宮座制も一応長老制と考えられる。そのほか,古代ギリシア都市国家やローマでもみられた。

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