改訂新版 世界大百科事典 「ナンディ族」の意味・わかりやすい解説
ナンディ族 (ナンディぞく)
Nandi
東アフリカ,ケニア西部,ビクトリア湖北東方の高地に住む,ナイロティック系の文化をもつ人々。ナイル・サハラ語族の分派シャリ・ナイル語を話す。人口は約35万(1979)。生業は集約的農耕で,主要作物のシコクビエ,トウモロコシ,サツマイモのほか,マメ類,野菜を灌漑された段々畑で栽培する。牛,ヤギ,羊の飼育も農耕に劣らぬ重要性をもつ。なかでも牛は食料源の乳,肉,血を供給し,乳からバター,チーズ,ヨーグルトも作られる。牛は結婚の際の花嫁代償として,また儀礼における犠牲としても利用される。ナンディ族は17の父系クランに分かれており,同一クランの者同士は結婚できない。一夫多妻を認める社会だが,姉妹がひとりの男の妻となることはない。結婚後の居住は夫方居住(嫁入婚)であり,妻はそれぞれの独立した家で子どもと暮らす。家は円錐形の屋根と円筒形の泥壁をもつ。伝統的な社会集団として最も重要なのは年齢組である。数個の年齢組があって,それぞれ名前がついている。男児は生まれるとすぐに最年少組に入れられ15年間続くが,その間に最年長組の成員はほとんど死んでしまう。最年長組の名前が今度は最年少組の名前として用いられる。こうして数個の組は15年ごとに循環していく。生きている男は全員どれかの組に属している。この数個の組の中で重要なのは,戦士組と長老組である。周辺部族を襲撃するのは戦士組の男たちであり,長老組は政治・司法上の権威をもつ。彼らの社会は伝統的に平等であり,奴隷はいない。
執筆者:松園 万亀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報