改訂新版 世界大百科事典 「長者教」の意味・わかりやすい解説
長者教 (ちょうじゃきょう)
仮名草子。作者不明。1627年(寛永4)刊。古活字版。1巻。小型の本で,巻末に〈右しゃほんのごとく開板〉とあるので,前に写本があったと思われる。江戸時代初期,町人の興隆があり,それに合わせて金持ちになる教訓を説いたもの。鎌田屋,那波(なば)屋,泉屋の3人の富豪のところへ賢い少年が訪ねてゆき,それぞれから金持ちになる秘訣を聞くという形になっている。節約・才覚・家職を大切にせよというのが共通の教訓である。なおいろいろな教訓歌を並べ,また〈たくわへ太郎たねもち〉といった福の神10人や貧乏神10人を挙げて,その名前に教訓を託している。西鶴の《日本永代蔵》の副題は,《大福新長者教》である。
執筆者:野田 寿雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報