日本大百科全書(ニッポニカ) 「長谷川龍生」の意味・わかりやすい解説
長谷川龍生
はせがわりゅうせい
(1928―2019)
詩人。本名・名谷龍生(なたにたつお)。大阪市船場(せんば)生まれ。早稲田(わせだ)大学仏文科中退。3歳のとき一家離散、幼少時より寄食生活を転々とする。自閉症を病む小学校時代を経て大阪府立富田林(とんだばやし)中学校時代より文学、思想書に親しみ、とくにロシア文学に傾倒する。小野十三郎(とうざぶろう)のもとで17歳より詩を書き始め、職を転々としながら1946年(昭和21)同人誌『渦動』創刊。1948年関西の詩誌『山河』、1952年関東の『列島』に参加、第二次世界大戦後の動乱期のアバンギャルド系左翼詩人として出発。1957年、あえて余韻を残すまいとするような、直截(ちょくせつ)で贅肉(ぜいにく)のない表現を特徴とする第一詩集『パウロウの鶴』で注目される。同年東京電通に就職。1958年、新日本文学会の『現代詩』の編集長となる。1960年、花田清輝(きよてる)、佐々木基一、安部公房(こうぼう)らと「記録芸術の会」をつくり、総合芸術運動を推進する。1964年東急エージェンシーに勤め万博ポピュラー芸能部門を担当、サミー・デイビス・ジュニアSammy Davis Jr.(1925―1990)やマレーネ・ディートリヒなどタレントを呼ぶ。1972年、十数年勤めた広告業界から退き、文筆活動に入る。詩集に『虎(とら)』(1960)、『長谷川龍生詩集』(1969)、『泉(ファンタン)という駅』(1975)、『直観の抱擁』(1976)、『詩的生活』(1978。高見順賞)、『バルバラの夏』(1980)、『知と愛と』(1986。歴程賞)、『マドンナ・ブルーに席をあけて』(1989)など。詩論集に『現代詩論集6 長谷川龍生 片桐ユズル』(1972)などがあり、映画評論も多い。日本現代詩人会会長を務めた(1997~2001)。
[陶原 葵]
『『長谷川龍生詩集 虎』(1960・飯塚書店)』▽『『現代詩文庫18 長谷川龍生詩集』『現代詩文庫136 続・長谷川龍生詩集』(1969、1996・思潮社)』▽『『現代詩論集6 長谷川龍生 片桐ユズル』(1972・晶文社)』▽『『詩集 泉(ファンタン)という駅』(1975・サンリオ出版)』▽『『長谷川龍生詩集 詩的生活』(1978・思潮社)』▽『『詩集 バルバラの夏』(1980・青土社)』▽『『知と愛と』(1986・思潮社)』▽『『マドンナ・ブルーに席をあけて』(1989・思潮社)』▽『『泪が零れている時のあいだは』(1989・思潮社)』▽『『立眠』(2002・思潮社)』▽『西郷竹彦著『名詩の美学』(1993・黎明書房)』▽『「長谷川龍生の現在」(『現代詩手帳』7月号所収・2002・思潮社)』