日本大百科全書(ニッポニカ) 「阮大せい」の意味・わかりやすい解説
阮大せい
げんだいせい
(1587ころ―1646)
中国、明(みん)末清(しん)初の政治家、劇作家。懐寧(かいねい)(安徽(あんき)省)の人。字(あざな)は集之(しゅうし)、号は円海、石巣(せきそう)、百子山樵(ひゃくしさんしょう)。1616年(万暦44)の進士。天啓年間(1621~27)に魏忠賢(ぎちゅうけん)の党に加わり、魏が失脚すると南京(ナンキン)に隠れて時機を待ったが、東林党、復社に仕官を阻まれ、福王朱由崧(しゅゆうすう)が南京に擁立されると馬士英(ばしえい)について兵部尚書となった。南京陥落後は清朝に降(くだ)った。劇作の多くは南京時代のものといわれ、9種の題名が知られており、伝存する『石巣伝奇四種』のうち、『燕子箋(えんしせん)』『春灯謎(しゅんとうめい)』が有名である。文辞の華やかさで劇界臨川(りんせん)派の代表という声誉を与えられているが、構成の巧みさと裏腹に内容は平凡で、その作風を倣った湯顕祖(とうけんそ)文学の品格はない。
[傳田 章]