改訂新版 世界大百科事典 「阿弥陀聖衆来迎図」の意味・わかりやすい解説
阿弥陀聖衆来迎図 (あみだしょうじゅらいごうず)
極楽浄土への往生を願う念仏者の一大幻想を,阿弥陀如来が諸聖衆をしたがえて,今まさに眼前に来迎した情景として描き出した絵画。数ある来迎図の中でも最高傑作とされる高野山有志八幡講十八箇院蔵の図(国宝)は抒情性にあふれ,卓越した群像表現をみせる。当初一幅の画面で仏堂にかけられ,高位の人をも交えた念仏者の迎講(むかえこう)の本尊として用いられたものであろう。来迎の諸尊が見る者と直接向かい合う本図には,観想念仏の伝統が残っており,鎌倉時代以後の説明的な来迎図とは性格を異にする。明澄な色彩や描線の性格などから,12世紀後半の制作と考えられる本図は,比叡山安楽谷に伝わり名画として知られていたが,1571年(元亀2),織田信長の叡山焼打ちにあい,数奇な流転を経た後,87年(天正15)に高野山に納められたと伝えている。
→浄土教美術
執筆者:須藤 弘敏
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