雌雄どちらか一方の性だけに伝わる遺伝。伴性遺伝(はんせいいでん)の一つの型で、アメリカの遺伝学者T・H・モルガン(モーガン)によって名づけられた(1910)。性をもつ生物の雌雄は、主として性染色体の組合せによって決定される。一方の性のみにある性染色体(たとえばY染色体)の上にある遺伝子によって支配される形質や、その遺伝子のために抑制される形質は、その染色体をもつ性のみに現れ、または抑制される。熱帯魚のグッピーの背びれの黒斑(こくはん)点は雄のみに、ヒトの水かき指(指趾(しし)癒着症)は男性のみに現れるのがその例である。
乳牛が産生する乳の質や量は、ウシの常染色体上の遺伝子によって支配されている。乳を産生するのは雌牛のみであるから、この遺伝子は雌のみに発現する。ヒトの母乳の量についても限性遺伝子があると考えられるが、その遺伝についてはほとんどわかっていない。
[黒田行昭]
『安田徳一著『人のための遺伝学』(1994・裳華房)』▽『黒田行昭編著『21世紀への遺伝学1 基礎遺伝学』(1995・裳華房)』
…雌雄の鑑別を容易にするために限性遺伝を利用して作られた品種。両性生殖をする多くの動植物では,雌雄どちらかの性がヘテロ型(XY)の性染色体をもつ。…
※「限性遺伝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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