日本大百科全書(ニッポニカ) 「院内助産」の意味・わかりやすい解説
院内助産
いんないじょさん
緊急時の対応が可能な病院ほか医療機関などにおいて、正常な妊娠および出産に対して助産師が自立してケアを行うこと。恒常的な産科医不足により、普通に子供を産む環境すら脅かされている現状において、厚生労働省が「院内助産所・助産師外来施設整備事業」を立ち上げ整備に乗り出したこともあり、取り扱う施設の数も毎年増えている。この事業では、院内助産所と助産師外来の二つの体制が提示されている。院内助産所は、緊急時の対応ができる医療機関などにおいて、正常経過の妊産婦のケアおよび助産(分娩(ぶんべん)の介助や新生児のケアも含む)を助産師が自立して行うもので、ここでいう助産所とは、医療法第2条でいう助産所には該当しない。また助産師外来とは、病院ほか医療機関などの外来で、医師の診察と並行して、正常経過の妊産婦の健康診査と保健指導を助産師が自立して行うものである。日本看護協会では、これら院内助産(所)と助産(師)外来をまとめて、保健師助産師看護師法に定められる範囲内で、とくにローリスクの妊産褥(にんさんじょく)婦の健康診査、分娩介助、保健指導(健康相談・教育)を助産師が主体的に行う包括的な「院内助産システム」を提唱している。
同じく産科医不足を経験したイギリスやフランス、オーストラリアなどではすでに、病院内外で医師との連携のもとに、助産師が主体となって正常な出産に対応する体制が確立されている。
[編集部]