難民の地位に関する条約(読み)なんみんのちいにかんするじょうやく(英語表記)Convention relating to the Status of Refugees

知恵蔵 「難民の地位に関する条約」の解説

難民の地位に関する条約

国連が主催した難民及び無国籍者の地位に関する国連全権会議が1951年7月28日、難民の人権保護と難民問題解決のための国際協力を効果的にするため採択した条約。54年4月22日発効。この条約を補充するため66年、難民の地位に関する議定書が作られ、67年発効した。日本は81年に両者加入し、82年1月1日から加盟国になっている。難民とはrefugeeの訳で「亡命者」と訳されることもあり、人種宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由とする迫害のため外国に逃れ、本国の保護を受けられない者をいう。条約は難民の庇護(ひご)・定住を確保するため、法的地位、就職、福祉について詳細に定めている。なかでも難民を迫害の待つ国へ送還してはならないというノン・ルフールマンの原則を定めた規定(33条)は重要である。日本は加入を機に、それまでの出入国管理令の内容を改め、出入国管理及び難民認定法とした。

(宮崎繁樹 明治大学名誉教授 / 2008年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「難民の地位に関する条約」の意味・わかりやすい解説

難民の地位に関する条約
なんみんのちいにかんするじょうやく
Convention Relating to the Status of Refugees

1951年7月28日に締結された難民の保護を内容とする条約。この条約が保護する難民とは「人種,宗教,国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見」を理由とする迫害から逃れる者である。そうした者には,不法入国しただけでは刑罰を科してはならないとし,また迫害の待つ地域には追放,送還してはならないと定める。その他この条約は,滞在国が難民の帰化促進のためさまざまな人権を認めるべきものとする。日本は 1981年に批准した。

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世界大百科事典(旧版)内の難民の地位に関する条約の言及

【難民】より

…これに対し,1921年以来国際連盟は難民問題の解決を図るための努力をしてきた。この事業は国際連合に引き継がれ,51年国連難民高等弁務官事務所UNHCRが設置され,7月には難民の保護が具体的に守られるようになった(難民の地位に関する条約)。UNHCR設置の背景には,第2次大戦中のヨーロッパの難民が4050万人にも及んだという事実が大きく働いている。…

※「難民の地位に関する条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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