雲仙山系(読み)うんぜんさんけい

日本歴史地名大系 「雲仙山系」の解説

雲仙山系
うんぜんさんけい

島原半島の中央にある山系で、雲仙岳は溶岩円頂丘の絹笠きぬがさ火山群・九千部きゆうせんぶ火山群・雲仙火山群の総称であるが、狭義には普賢ふげん岳と国見くにみ岳・妙見みようけん岳をいう(雲仙岳三峰)安山岩を主体とする複成火山で、長崎県下で唯一の活火山として知られる。雲仙火山群に普賢岳(一三五九・三メートル)があるほか、七面しちめん(眉山、八一八・七メートル)国見岳(一三四七メートル)・妙見岳(一三三三メートル)(一一四二メートル)があり、山系の中央部に雲仙地溝が東西に形成され、南北に火山性山麓扇状地が広がる。火山形成は二期に分けられ、約五〇万―一五万年前の古期雲仙火山のうちでは最初期のものが小浜おばま火山で、高岳たかだけ火山・九千部火山がこれに続く。一〇万年よりのちの新期雲仙火山では野岳火山が早く、そのあと三万―二万年前に妙見岳火山の活動があり、その末期に妙見カルデラが形成された。そのカルデラ内で約一万五〇〇〇年前から普賢岳火山が活動して数度の火砕流の発生があったという。約四〇〇〇年前に眉山まゆやま火山が活動、溶岩ドームを形成。この間、火山麓扇状地に阿蘇四火砕流(約八万―九万年前)・姶良-Tn火山灰(AT、約二万五〇〇〇年前)・鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah、約六三〇〇年前)などの広域テフラ(火山灰)が発見された。雲仙火山を中心とする一帯は雲仙天草うんぜんあまくさ国立公園。

〔信仰の山〕

大宝元年(七〇一)行基により温泉山大乗だいじよう満明まんみよう(現廃寺、小浜町)が開創され、四面しめん(現同町温泉神社)とともに雲仙の山岳信仰の中心であったという。「肥前国風土記」に「高来峰」とみえ、高来たかく郡の南部に峰の湯の泉があり、流量が多く、また温度が高いので水を加えて沐浴するなどと記され、山名はこの温泉に由来する。また有明海の海路を進む人々にとって航海の安全を祈願する対象であったと考えられ、後代の記録ながら「雲仙が嶽は西国の名山なり。山のふもと皆海にて、纔に北の方ばかりいとすじのごとく陸に連れり。高さ三里、只一峯に秀でゝ、甚だ見事なる山也。唐船などの長崎へ渡るにも、大洋の中にて、此雲仙が嶽を目当とする」というのは(西遊記)、古代にも同様であったろう。中世、当山一帯に大乗院を中心に多数の坊舎があったと伝える。南北朝期には温泉山衆徒がみられ、温泉うんぜん山真言道場があって、在地の有力者層の崇敬を受けていた。フロイス「日本史」によれば、絶えず激しい勢いで種々の硫黄の熱湯が噴出しているいくつかの凹があり、この硫黄泉に近い山の上には肥前国内でも大いなる僧院が建ち、日本でも最大かつ一般的な霊場の一つで、絶えず巡礼者が訪れているという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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