電波環境に影響されず、電子機器から放射される電波雑音を測定するためのシールドルーム。フェライト焼結合金や炭素を含有したポリウレタンなどでつくったくさび形や四角錘形の電波吸収体で内壁を覆って壁面からの電波の反射を抑え、出入口は金属製ドアを用いて外部からの電波を遮断している。電波無反射室、電波無響室ともよぶが、とくに床を除いた五面を電波吸収体で覆ったものを電波半無響室ともよび、ある定まった地上高で使用するパソコンや家電製品の測定に用いている。室内は音波も吸収されるので無響室のように静寂である。
コンピュータ、携帯電話などの電子機器に対し、ほかの電子機器から発生する電磁波雑音による妨害への対策を行うには、各機器が発生する電磁波を厳密に測定する必要があり、そのための装置である。1975年から電磁波障害(EMI=Electro Magnetic Interference)に対する規制を行っているアメリカでは、戸外で電磁波雑音のない場所を選び測定をしているが、日本では都心近くに電磁波雑音のない場所が得がたいことから、工場内でも設置可能な電波暗室が用いられている。基礎技術研究開発促進税制の対象として、財務省は電波暗室を「30メガヘルツ~1ギガヘルツの周波数域における電波の伝搬特性の測定値が理論値の4デシベル以内の偏差で、電波の遮蔽率が100デシベル」とアメリカ並みの規定をしている。EMIには電子機器からの放射雑音のほか電源線とか接続機器からの漏れ雑音もある。これらの測定のために電波暗室には電界強度計、電波雑音受信機、妨害電波用電界強度測定器およびスペクトルアナライザが設置される。
[岩田倫典]
『橋本修著『電波吸収体のはなし』(2001・日刊工業新聞社)』▽『山田和謙、池上利寛、佐野秀文著『EMC入門講座――電子機器電磁波妨害の測定評価と規制対応』(2008・電波新聞社)』
…光が入らないように作る暗室と同様に,電気的,磁気的に外界の影響を受けないように作られた室を遮へい室という。目的により電波暗室などと呼ばれ,精密な測定,実験などに用いられる。また,送電鉄塔などの最上部に碍子(がいし)を経ずに取り付けられている線を架空地線といい,これは送電線を雷から遮へいし,送電線への直接の落雷を防止する働きをするものである。…
…電波暗室ともいう。音に対する無響室,光に対する暗室に相当するものである。…
※「電波暗室」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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