日本大百科全書(ニッポニカ) 「電解酸化・還元反応」の意味・わかりやすい解説
電解酸化・還元反応
でんかいさんかかんげんはんのう
電解酸化
electrolytic oxydation水溶液の電気分解の陽極でおこる酸化反応の総称。この反応には、(1)金属の溶解反応、(2)金属酸化皮膜の生成反応、(3)酸素の発生反応、(4)塩素の発生反応、(5)その他の反応、がある。
一般に、電解反応は陽極では電子が奪い取られて正電荷が増加する。これは酸化である。
陽極に金属ニッケルを用い、浴の中に硫酸ニッケル・塩化ニッケルを入れ溶融後電解すれば、陰極の材料がニッケルメッキされる。そのとき、陽極には酸素・塩素が発生する。
アルミニウム、タンタルなどの金属を陽極にして通電すると、陽極の表面に酸化物皮膜ができる。このとき浴には硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ホウ酸などが用いられる。得られる皮膜は酸化アルミニウムが主成分である。
[下沢 隆]
電解還元
electrolytic reduction水溶液の電気分解の陰極でおこる還元反応の総称。この反応には、(1)金属の析出反応、(2)水素の発生反応、(3)その他の還元反応、がある。
一般に、陽極では水溶液中の金属イオン(陽イオン)が陰極で発生する電子を受け取って金属となる。このように、電子を受け取って正電荷が電荷ゼロになる現象を還元という。電解還元では、金属が発生するので、金属の精錬に利用されている。たとえば、アルミニウムの精錬の場合、炭素で内張りした炉の中に、氷晶石AlF3・3NFに酸化アルミニウムAl2O3を入れ電解する。陽極では
陰極では
の反応がおこる。このとき電解槽にかける電圧は4ボルト、アルミニウム1トンの生産に要する電力は毎時1万4000キロワット程度である。
[下沢 隆]