改訂新版 世界大百科事典 「非磁性材料」の意味・わかりやすい解説
非磁性材料 (ひじせいざいりょう)
nonmagnetic alloy
磁化されず,したがって磁界の影響を受けない金属材料の総称。とくに磁性材料といっしょに使用される。磁性材料を用いて電磁石など磁気を利用する装置を作るには,磁性材料を目的に応じた形状寸法に配置するが,そのときにこれらを支持する部分には非磁性の材料を使用しなければならない。これは磁力線の漏れや不要の発熱などの損失を生じないようにするためである。とくに大型の装置ではこの部分に加わる力が大きくなるので,強度,靱性(じんせい)にすぐれたものが必要となる。さらに超電導マグネットの場合には低温での性質のよい材料が必要となる。アルミニウム合金,銅合金,チタン合金,ニッケル合金であるインコネルなど,強磁性を示さない材料をこの目的のために使用することができる。18-8ステンレス鋼は,ニッケルの作用により組織がオーステナイト(面心立方格子)であるので非磁性であり,他の特性もすぐれるので広く使用されるが,欠点として加工ひずみによって強磁性のマルテンサイトが生成し透磁率が上がってしまうことがある。この欠点のない鋼として注目されているのが高マンガン鋼で,これは主としてマンガンの作用により非磁性のオーステナイト組織となるためである。マンガン量が14%,18%,25%のものが用いられている。
執筆者:大久保 忠恒
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報