日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルミニウム合金」の意味・わかりやすい解説
アルミニウム合金
あるみにうむごうきん
aluminium alloys 英語
aluminum alloys 米語
アルミニウムを主体とし、これに他元素を意図した配合量を加えた合金。略してアルミ合金ともいう。アルミニウム合金は、その密度(約2.7g/cm3)が鉄鋼(約7.8g/cm3)や銅合金(約8.9g/cm3)の半分以下で、きわめて軽い。また、一定断面積当りの強さで比較すればとくに鋼より強いわけではないが、同じ質量当りの強さで比較すると、高力アルミニウム合金とよばれるものの比強度(引っ張り強さと比重の比)は高張力鋼よりも高い。
アルミニウム合金は加工しやすく、切削加工、押出し、圧延、プレスなどの塑性変形加工、鋳造、溶接などほとんどすべての金属加工法が適用できる。また、板、棒、管、鋳物などあらゆる形の素材が比較的簡単に得られる。また、アルミニウム合金は普通環境で外観不変である。アルミニウム自体は活性な金属であるが、その表面は薄い強固な酸化膜で覆われてしまうので、さびや腐食を生じないで美しさを長期間保つ。さらに光や電波のよい反射体で、その表面性質は長期間変わらない。また化学処理によって表面を強化し、耐食性や耐摩耗性を向上させることも容易である。アルミニウム合金は軽くて強いから、同じ強さ当り、あるいは同じ質量当りで比較すると、きわめて優れた伝導性をもつことになる(熱や電気の伝導率は銅の約2分の1、鋼の3~4倍)。そのほか、無毒であること、磁化しないこと、低温になってももろくならないことなどの特徴がある。
[及川 洪]
加工用アルミニウム合金
実用アルミニウム合金の約80%は鍛造、押出し、圧延などで所望の形に成形して用いる。工業用アルミニウム(純度99.5~99.99%)のおもな不純物である鉄とケイ素を加減して特性を調節する。強さは低いが加工性に優れているので、表面特性のみが問題となる分野で多量に用いられている。強さを向上させることを目的に開発された高力合金系としてアルミニウム‐銅(‐マグネシウム)系合金(代表例ジュラルミン)、アルミニウム‐亜鉛‐マグネシウム系合金(代表例超々ジュラルミン)などがある。これらは熱処理によって強さを高める時効硬化型合金である。また主として耐食性をも向上させることを目的として開発された耐食合金系としてアルミニウム‐マンガン系合金、アルミニウム‐マグネシウム系合金(代表例ヒドロナリウム)などがあり、これは加工硬化で強さを出す。この中間として強さ、耐食の双方をねらったアルミニウム‐マグネシウム‐ケイ素系合金があり、窓枠サッシなどに使われる。アルミニウムの融点は銅や鉄に比べるとかなり低いので耐熱性はあまりないが、アルミニウム合金として耐熱性を向上させた合金としては、昔からニッケルを加えた合金があり、最近は非常に細かいアルミナ(酸化アルミニウム)やトリア(酸化トリウム)の粒子を含ませた分散強化合金(代表例SAP)もある。
[及川 洪]
鋳造用アルミニウム合金
アルミニウム合金の約20%は鋳物に利用される。アルミニウム合金の鋳造性は、ケイ素を多く加えた共晶合金にすることによって著しく改良されるので、特別な強さを必要としない場合にはアルミニウム‐ケイ素系合金(代表例シルミン)が広く用いられる(非熱処理型合金)。銅やマグネシウムを含む合金は熱処理(時効硬化)によって強さを向上できるので、強さが問題となる場合にはアルミニウム‐銅‐ケイ素系合金(代表例ラウタル)や、これにニッケルを加えて耐熱性を向上させた合金(代表例Y合金、RR合金)などが使用されるが、耐食性はよくない。耐食性が問題となる場合にはアルミニウム‐マグネシウム系合金が使用される。
[及川 洪]