電磁石(読み)でんじしゃく

精選版 日本国語大辞典 「電磁石」の意味・読み・例文・類語

でん‐じしゃく【電磁石】

〘名〙 鉄心のまわりを絶縁してコイルを巻き電流を通して磁束を発生するもの。コイルの巻き数、電流の大きさ、磁極の大きさ、形状などの違いにより電話や電動機からサイクロトロンまで広範囲に応用される。電気磁石。〔現代大辞典(1922)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「電磁石」の意味・読み・例文・類語

でん‐じしゃく【電磁石】

鉄心にコイルを巻きつけたもの。コイルに電流を通じると電磁誘導を生じ、鉄心が一時的に磁石となる。電気磁石。
[類語]磁石マグネット永久磁石

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電磁石」の意味・わかりやすい解説

電磁石
でんじしゃく

電流によって磁化する磁石のことで、永久磁石ということばに対して使われる。電流はそれの流れる導線の周囲に同心円状の磁場をつくる。この原理に基づいて、もっとも簡単に磁場を発生できるのが、ソレノイド(導線を多数回円筒状に巻いたコイル)である。この場合、長さをL、半径をr、単位長当りの巻数をn、電流をiとすると、ソレノイドの中点では軸方向に

エルステッドの磁場をつくることができる。しかしこの磁石での最高磁場はコイルの冷却をよくしても、たかだか0.5テスラ以下である。高い磁場を得るための電磁石は、鉄にコイルを巻いた、一つの閉じた磁気回路に空隙(くうげき)をつくり、磁束密度が連続であることを利用してその空隙に磁場を発生させるものである。このタイプの電磁石は、その特性および構造上から、鉄をその磁気誘導飽和値以下(~2テスラ)で使用するワイス型と、構造にくふうを加え、飽和値から期待される以上の磁場をつくるビッター型とに分類される。ワイス型では磁気回路のもっとも磁束密度の大きいFe‐Co合金を用いることが多い。またビッター型では、磁極の円錐(えんすい)側面上にできる磁荷および内部に生ずる磁荷によって磁場をあげており、4~5テスラの磁場を発生させることができる。

 また超伝導線でソレノイドコイルをつくることにより、液体ヘリウム温度で高磁場を発生することができる。これは超伝導磁石とよばれているが、これも電磁石の一種と考えることができる。

[安岡弘志]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「電磁石」の意味・わかりやすい解説

電磁石 (でんじしゃく)
electromagnet

電流によって磁化する磁石。永久磁石に対していう。導体に電流を流すと,その周囲に同心円状の磁場を作る。ソレノイドコイル(円筒状コイル)に電流を流せば軸方向に磁場を生ずる。これらの磁場中に鉄片(鉄心)を置けば磁化して磁石となる。これら電磁石は電流を切れば,磁化しない状態にもどる。電磁石は永久磁石と同様に鉄を吸引し,また同極どうしは反発し異極どうしは吸引する。この性質を利用して,発電機,電動機などの電気機械をはじめ,鋼板重量物つり上げ,制御回路,継電器などに広く利用されている。交流用のものはケイ素鋼板など,励磁鉄損の少ない鋼板を鉄心として用いる必要がある。電磁石も特殊設計すれば数Tの強磁場も作れるが,一般には鉄の飽和のため1T程度で使用されることが多い。それ以上の強磁場を作るにはむしろ鉄のない,空心のソレノイドで大電流を流す方法があり,10Tを超える強磁場を得ている。強磁場を得るには超電(伝)導電磁石を用いるほうが有利な場合が多い。原理的には空心のコイルと同じだが,超電導線は銅線に比べ,損失なく,はるかに大電流を流せるので,数T~十数Tの強磁場を作りやすい。超電導電磁石は,電気機械の小型軽量化,効率向上の目的や,核物理実験装置用の電磁石として開発が進められており,一部実用化している。
磁石
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「電磁石」の意味・わかりやすい解説

電磁石【でんじしゃく】

透磁率の大きい強磁性体(軟鉄など)の鉄心にコイルを巻いたもの。コイルに電流を通じるとその磁場によって鉄心が磁化されて磁石となり,電流を切れば磁化しない状態にもどる。通信機器用のリレーから,1t以上の鉄材を運搬できる大型のものまで種々あり,電鈴,スピーカー,発電機,電動機,サイクロトロンその他広く利用される。交流で磁化する電磁石の鉄心は,ヒステリシス損失の少ないケイ素鋼を薄板にし,絶縁して積み重ねて渦(うず)電流による損失を防ぐ。→磁石

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電磁石」の意味・わかりやすい解説

電磁石
でんじしゃく

磁石」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の電磁石の言及

【磁石】より

…【藪内 清】
[磁石の性質]
 磁極をもつ物体,またそれが周囲につくるのと同様な磁場をつくり出す装置が磁石である。強磁性体(フェリ磁性体を含む)を用い磁化を保つようにしたものを永久磁石,導線でコイルをつくり,電流を流して磁場をつくり出すものを電磁石と呼ぶ。電磁石にはコイルの中に,強磁性体の心(磁心という)をもつものともたないものとがあり,磁心をもたないものを空心コイルとして電磁石と区別する場合もある。…

【スタージャン】より

…イギリスの電気物理学者。世界で初めて電磁石を製作し,世界最初の電気関係学会と電気ジャーナルを作った。ウィッティントンに生まれ,父親は靴屋で,スタージャンも靴職人の修業をしたのち,砲兵隊に入った。…

※「電磁石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android