チタン合金(読み)ちたんごうきん(英語表記)titanium alloys

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チタン合金」の意味・わかりやすい解説

チタン合金
ちたんごうきん
titanium alloys

チタンを主成分とする合金。チタンは高温では活性の金属であるので、温間加工、熱処理などには特別な注意が必要であるが、通常の塑性加工、機械加工は容易であり、構造材料としてしだいに利用されるようになった。チタンの耐食性ステンレス鋼よりも優れ、ごく特殊な例を除いて各種の酸やアルカリにはほとんど侵されないので、各種化学工業用耐食材料として純チタンあるいはパラジウムタンタルを加えた耐食チタン合金が用いられている。チタンには882℃に同素変態があるので、鋼の場合と同じように、その合金は適当に熱処理することによって機械的性質を大幅に変化させることが可能である。おもな添加元素はアルミニウムマンガン、鉄、スズモリブデンバナジウムなどであり、適当な組成と熱処理の組合せによって超高張力鋼に相当する強度が得られる。チタンの比重は4.50と軽いので、チタン合金は軽量で強度の高い優れた材料であり、超音速機、ジェットエンジン、宇宙ロケット部品などに使用される。実用温度範囲は零下198℃から480℃にわたる。耐食性に優れ、さらに他の金属材料よりも弾性率を低くできることから、近年はステンレス鋼にかわるインプラント材として体内で使用されることも多い。

[及川 洪]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チタン合金」の意味・わかりやすい解説

チタン合金
チタンごうきん
titanium alloy

金属チタンがもつ軽量,高融点,高強度,およびすぐれた耐食性などの特性を生かす方向でつくられる合金。 5Al-2.5Sn,8Mn,4Al-4Mn,6Al-4V,5Al-2.75Cr-1.25Fe (数字は組成%) その他多種あるが,いずれも純チタンより高温強度が大で,特に長時間熱間での破断強さが増大する。モリブデンを添加した 7Al-3Mo,4Al-3Mo-1Vなどの品種は,高温耐食性が大きい。これらはすべて化学工業用構造材,航空機エンジン部品,ジェットエンジン部品などに実用されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報