日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニッケル合金」の意味・わかりやすい解説
ニッケル合金
にっけるごうきん
nickel alloys
ニッケルを主成分とする、あるいはニッケルを多量に含む合金。ニッケルは化学的腐食に対する有効な保護被覆材となる経済的な材料であるので、その生産量の約20%はニッケル板あるいは合せ板として純ニッケルのままで用いられる。ニッケルは鉄、銅などと容易に任意の割合で溶け合い、種々の特性をもつ合金となるので、その生産量の約50%は鉄との合金、約25%は銅との合金として用いられる。
ニッケルはステンレス鋼の主要成分(主成分は鉄、他の主要成分はクロム)であり、ニッケル生産量の約40%はこのステンレス鋼用に消費されている。ステンレス鋼は優れた耐腐食性をもち、しかも強靭(きょうじん)なので、化学装置、食品処理装置、調理用器具などに多量に用いられている。ニッケル・クロム含有量のさらに高いものは耐熱鋼として高温部分に使用される。さらにニッケル量の多いニッケル基合金には、現在もっとも耐熱性の優れている汎用(はんよう)耐熱合金(アルミニウム、チタンなどを主要成分とし、超合金と称される)やTD‐ニッケル(酸化タリウム分散強化ニッケル合金)などがある。ニッケルは鋼の強靭性を向上させるので、合金鋼中にはニッケルを0.5~10%含むものが多い。
ニッケルと銅の合金は耐食性に優れているので、建築材料、化学・食品処理装置、船舶・発電装置などに用いられる。代表例としてはキュプロニッケル(2.5~45%ニッケル)やモネルメタル(67%ニッケル)などがある。そのほかニッケル含有合金には、電気抵抗合金(例ニクロム=10~35%クロム、残部ニッケル)、磁石合金(例アルニコ=5~24%コバルト、3~6%銅、8~12%アルミニウム、14~32%ニッケル、残部鉄)、熱膨張制御合金(例アンバー=30~60%ニッケル、残部鉄)、熱電対(でんつい)合金(例アルメル=2.5%マンガン、2%アルミニウム、1%シリコン、残部ニッケル、クロメル=10%クロム、残部ニッケル)など種々のものがある。さらにニッケル硬貨(25~100%ニッケル、残部は銅や亜鉛など)は世界各国で広く使用されている。これよりニッケル量の少ないニッケルシルバー(洋白、洋銀=10~30%ニッケル)は銀めっき製品基材、ファスナーなど多くの日用品に用いられている。18%ニッケル、27%亜鉛、55%銅合金は耐食ばね材としてきわめて広い範囲で用いられる。
[及川 洪]