響動(読み)どよむ

精選版 日本国語大辞典 「響動」の意味・読み・例文・類語

どよ・む【響動】

(古くは「とよむ」)
[1] 〘自マ四〙
① 音が鳴り響く。どよめく。
(イ) 物の音が鳴り響く。あたりを揺り動かすように鳴る。
書紀(720)武烈即位前・歌謡「臣(おみ)の子の 八符(やふ)柴垣 下騰余瀰(トヨミ) 地震(なゐ)が揺(よ)り来ば 破れむ柴垣」
※宇津保(970‐999頃)吹上下「涼は、いやゆきが琴を〈略〉ねたうつかうまつるに、雲の上より響き、地の下よりとよみ」
(ロ) 人の叫び声笑い声、泣き声などが鳴り響く。また、大声をあげて騒ぐ。叫ぶ。
※古事記(712)下・歌謡「宮人の 足結(あゆひ)の小鈴 落ちにきと 宮人登余牟(トヨム) 里人もゆめ」
源氏(1001‐14頃)明石「身に代へて、この御身一つを救ひたてまつらんととよみて」
(ハ) 鳥獣の鳴き声が鳴り響く。
※古事記(712)上・歌謡「青山に ぬえは鳴きぬ さ野つ鳥 雉(きぎし)は登与牟(トヨム)
(ニ) ざわざわと騒ぐ。ざわめく。声が響きこもる。
※談義本・根無草(1763‐69)後「しらせの撃柝(ひゃうしぎ)替名の読立、幕明てより殊更にどよみ」
② 平穏を乱して騒動が起きる。騒動する。
※書紀(720)崇峻即位前(図書寮本訓)「物部大連が軍衆(いくさ)三度(みより)驚駭(トヨム)
③ 傷などが、ずきずきと痛む。うずく。
浄瑠璃・大経師昔暦(1715)中「殊に今日は土用の入、それでか跡がきつうどよむ」
[2] 〘他マ下二〙 鳴り響かせる。とよもす。
万葉(8C後)一五・三六八〇「夜を長み眠(い)の寝らえぬにあしひきの山彦等余米(トヨメ)さ男鹿鳴くも」
[語誌](1)「とよむ」が「どよむ」に変わったのは平安中期以後と思われる。古くは人の声よりはむしろ、鳥や獣の声や、波や地震の鳴動など自然現象が中心であったのに対して、濁音化してからは、主として人の声の騒がしく鳴り響くのに用いられるようになった。
(2)この語の「どよ(とよ)」は「どよめく」「とよもす」などと同様に擬声語から出たものと考えられる。

どよみ【響動】

〘名〙 (古くは「とよみ」。動詞「どよむ(響動)」の連用形名詞化)
① 音・声が鳴り響くこと。大声で叫ぶこと。また、その声。あるいは、大騒ぎ。どよめき。
※栄花(1028‐92頃)つぼみ花「今ひとしきりのどよみの程、あさましきまでおどろおどろしきに」
人心気持などが動揺すること。また、その動揺。あるいは、騒動。
今昔(1120頃か)二五「馬共はどよみにどよまされて走り騒げば」

とよも・す【響動】

〘他サ四〙 (後に「どよもす」とも) 音や声を響かせる。鳴り響かせる。さわがす。
※書紀(720)皇極三年六月・歌謡「遠方(をちかた)浅野の雉(きぎし) 騰余謀佐(トヨモサ)ず 我れは寝しかど 人そ騰余謀須(トヨモス)

どよもし【響動】

〘名〙 (動詞「どよもす(響動)」の連用形の名詞化) 音や声を響かせること。音や声の響き。どよめき。
※二十五絃(1905)〈蒲田泣菫〉金剛山の歌「嗄声(からごゑ)たかきどよもしに、千歳(ちとせ)の夢はやぶられて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

普及版 字通 「響動」の読み・字形・画数・意味

【響動】きようどう

どよめく。

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