顕微授精(読み)ケンビジュセイ

デジタル大辞泉 「顕微授精」の意味・読み・例文・類語

けんび‐じゅせい【顕微授精】

顕微鏡を使って精子卵子受精させる方法。不妊治療として用いられ、広い意味での体外受精に含まれる。卵細胞に直接精子を注入するため、精子の運動率や形態に異常がある場合にも受精が可能となる。顕微授精は不妊治療の最終段階に位置づけられており、乏精子症精子無力症などには特に有効とされる。
[補説]顕微授精の操作は胚培養士が行う。ICSIイクシー法(卵細胞質内精子注入法)、PZD法(透明帯開孔法)、SUZI法(囲卵腔内精子注入法)などの方法があるが、現在はICSI法主流。卵は卵胞の発育状況をみながら採卵し、精液は洗浄・濃縮したうえで、顕微鏡下で細いガラス管に精子1個を吸引し、1個の卵子の細胞質内に注入する。通常は、採取済みの正常な卵子すべてについて顕微授精を行い、胚培養室で培養する。胚が発育しているかどうかは24~72時間でわかる。正常に発育した受精卵は、通常の体外受精と同じように子宮内に戻す。顕微授精によって誕生した子どもは、世界で数万人に上るとされる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「顕微授精」の意味・わかりやすい解説

顕微授精
けんびじゅせい
microinsemination

不妊治療における体外受精の一形態。通常の体外受精では、女性の体内から取り出した卵子に精子を振りかけて受精を促すのに対し、顕微授精は、体内から取り出した精子や卵子を顕微鏡で確認しながら受精の手助けを行う方法をさす。顕微授精として現在おもに実施されているのは、顕微鏡を用いて精子の形態や運動能力を確認したうえで、そのなかから一つの精子を選び、その精子をマイクロピペットとよばれる微細なガラス管で卵子の中に直接注入して受精を促す卵細胞質内精子注入法(ICSI(イクシー))である。通常の体外受精では受精が成立しない場合や、男性側の精子の数が極端に少ないなど、顕微授精以外の方法では受精成立がむずかしいと考えられる場合に実施される。

 ICSIは1992年に世界で初めて報告された比較的新しい方法であるが、その後急速な広がりをみせ、日本国内での年間実施件数は2022年(令和4)で18万7816件(不妊治療実績全件数54万3630件のうちの約35%)となり、年々増加傾向にある。なお、2022年4月には、顕微授精を含む不妊治療が公的医療保険の対象となり、費用負担の軽減が図られている。

[編集部 2025年5月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

家庭医学館 「顕微授精」の解説

けんびじゅせい【顕微授精】

 顕微鏡で見ながら、細い針を卵子(らんし)に刺入して、卵子内に精子(せいし)を注入して受精させる体外受精法です。
 精子の活動性が低く、透明膜を破って中に入れないため受精できない不妊などの治療法で、1992年4月には、日本でも初めて、顕微授精による子どもが誕生しました。

出典 小学館家庭医学館について 情報

ユーラシア大陸、北アメリカ大陸北部に広く分布し、日本では北海道にエゾヒグマが生息する。成獣は体長2メートル以上、体重300キロにもなり、日本最大の陸生動物として知られる。雑食性で草や木の実、サケ、シ...

ヒグマの用語解説を読む