日本大百科全書(ニッポニカ) 「饅頭こわい」の意味・わかりやすい解説
饅頭こわい
まんじゅうこわい
落語。原話は中国明(みん)代『五雑俎(ござっそ)』『笑府』にあり、江戸中期にわが国で広まった。若い者が大ぜい集まって雑談をしているうちに、怖いものの話になった。ヘビ、ナメクジ、カエル、アリ、オケラ、クモ、ウマ、ナンキンムシなど次々に怖いものがあげられたが、最後に饅頭が怖いという男がいた。一同がいろいろな饅頭の名をあげてからかうと、その男は気分が悪いと隣の部屋で寝込んでしまう。一同は、あの男はいつもいばっているから懲らしめようと饅頭を買い集めて、男の枕元(まくらもと)に積んでおく。外からようすを見ていると、男は「あー、こわい、こわい」と叫びながら饅頭を次から次へと食べてしまう。計略にかかったことに気づいた一同が「手前が本当にこわいのはなんだ」「ここらでよいお茶が一杯こわい」。この咄(はなし)は江戸で成立したが、大阪で練り上げられてから、ふたたび東京へ移された。おもしろいので演(や)り手が多い。
[関山和夫]