日本大百科全書(ニッポニカ) 「笑府」の意味・わかりやすい解説
笑府
しょうふ
中国明(みん)末に、唐以来の笑話を集大成した書。13巻。墨憨斎(ぼくかんさい)主人撰(せん)。墨憨斎とは明末の俗文学界の大御所馮夢龍(ふうぼうりゅう)(1574―1645)の書斎の名。内容は、富貴・貧賤(ひんせん)に関するもの、儒者や医者・易者・僧侶(そうりょ)・職人などに関するもの、性癖・結婚などに関するものなどのほか13部に分け、短い文章に笑いと風刺を込めて人情世態の機微をうがった滑稽(こっけい)文学である。原本は、本国では早くから散逸してしまったが、日本では1768年(明和5)の京都文台屋多兵衛・円屋清兵衛板の『笑府』、江戸須原屋半兵衛板の『笑府』、翌69年の板元不詳の『刪(さん)笑府』の3種の抄訳が刊行されて、江戸小咄(こばなし)に大きな影響を与えた。
[駒田信二]
『松枝茂夫訳『笑府』上下(岩波文庫)』▽『駒田信二著『江戸小咄』(1985・岩波書店)』