日本大百科全書(ニッポニカ) 「骨角製装飾品」の意味・わかりやすい解説
骨角製装飾品
こっかくせいそうしょくひん
骨角歯牙(しが)、貝殻を材料としてつくられた装飾品。装飾的な彫刻をつけたもの、犬歯(けんし)、裂肉歯(れつにくし)など食肉獣の強さを示すもの、美しい貝殻の光沢、形態が利用されている。
ヨーロッパでは後期旧石器時代のマドレーヌ文化期ころから食肉獣犬歯の穿孔(せんこう)品がつくられ、東ヨーロッパの例ではサメの歯が使われた例もある。同じころ、人物、獣の彫刻像もつくられたが、単なる垂飾(すいしょく)ではなく、呪術(じゅじゅつ)的な意味をあわせもったものであったろう。ヘアピン(髪飾り)、櫛(くし)は中石器時代以降のものが多い。日本の縄文時代は、骨角歯牙、さらに貝殻を材料としてつくった装身具の多いことで知られる。複雑な彫刻や丹(に)(赤色)を塗ったヘアピン、櫛、透彫(すかしぼ)りをした管状製品、サメの椎骨(ついこつ)でつくった耳栓(じせん)、玦状(けつじょう)の耳飾(石製品を模したものであるが、形はさらに複雑)、クマ、オオカミ、オオヤマネコ、タヌキなど食肉獣の歯牙、下顎骨(かがくこつ)、肢骨(しこつ)の一部に穿孔したり、丹を塗ったもの、そしてまれに人物や動物(オオカミ、カエルなど)を彫刻したものがある。特殊なものに奇形の角や骨に穿孔している例がある。貝殻はくりぬいて腕輪にすることが多い。
北太平洋沿岸地域の狩猟、漁労民の間でも、クジラ、セイウチ、オットセイ、トナカイなどの骨角歯牙、貝を材料としてつくられる特異な骨角器文化が築かれる。神像、魚、鳥、獣類の彫刻、マスク、ラブレット(身体装飾の一)類は特徴のあるものであるが、日本では北海道東部にあったオホーツク文化(9~14世紀)も、広くそうした北太平洋文化の一つであったといえよう。
[金子浩昌]