日本大百科全書(ニッポニカ) 「高周波増幅器」の意味・わかりやすい解説
高周波増幅器
こうしゅうはぞうふくき
一般には、10キロヘルツより高い周波数の電気信号を入力とし、その入力に相似した、より大きなレベルの電圧や電力の信号に増強する装置をいう。しかし、どちらかといえば、受信機の内部の回路構成について使用される名称である。ストレート方式の受信機では、アンテナで目的とする微弱な電波をピックアップしてから、検波器で検波されるために必要なレベルにまで増幅する回路をいう。また、スーパーヘテロダイン方式の受信機では、受信機の入力端子から中間周波増幅部の前の周波数混合器に接続されるまでの前段の増幅回路のことをさす。別の見方をすれば、受信した電波を、その到来した被変調波のままで、次段の回路が効率よく機能するために必要なレベルにまで増幅する回路であると定義することができよう。高周波増幅器に使用される能動素子は真空管、トランジスタ、IC(集積回路)と進化したが、普通は同調回路を伴った増幅器で、増幅作用だけでなく混信を防ぎ、スプリアス(不要入力)を軽減する効果をもつので、スーパーヘテロダイン受信機ではイメージ比を改善することにも役だっている。受信機がどのくらい弱い入力まで受信することができるかを示す入力感度は、高周波増幅器の雑音指数で定まるから、増幅器として利得(入出力の比)が大きいこと以上に、雑音指数が小さいことが重要である。
特殊な用途では、同調増幅器としないで、特定の周波数帯域に対して平坦(へいたん)な増幅特性をもたせる場合もある。衛星通信用の地上受信設備に用いるマイクロ波の高周波増幅器では、低雑音のFET(電界効果トランジスタ)増幅器を使用したり、ときにはパラメトリック増幅器を零下200℃にまで冷却して雑音を下げ、超遠距離からの微弱電波を高感度に受信するような方法がとられている。送信機などで同じ周波数帯の増幅器を使用しても、通常は高周波増幅器とはよばない。
[石島 巖]