スプリアス(読み)すぷりあす(その他表記)spurious

翻訳|spurious

デジタル大辞泉 「スプリアス」の意味・読み・例文・類語

スプリアス(spurious)

本来必要とされる所定周波数帯を外れた信号成分。無線設備などが意図せずに発する不要な信号であり、電波障害原因となる。そのため、日本では電波法によってその強度が制限されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スプリアス」の意味・わかりやすい解説

スプリアス
すぷりあす
spurious

電波で信号を送信するときに、その通信方式に許される周波数帯幅を逸脱して発射される有害な電波をいう。電波法施行規則に、送信機において、必要周波数帯外に発射される不要な電波でそのレベルを情報の伝送に影響を与えないで低減できるもの、と定められている。他の電波通信に妨害を与えるので法によって厳しく規制されているのである。

 必要周波数帯は、占有周波数帯幅(全放射平均電力の99%が含まれる幅)の許容値として電波の型式および周波数帯ごとに決められた幅と、その周波数帯の中心の周波数の偏差の許容値として、周波数帯、無線局の種類、空中線電力ごとに決められた周波数の許容偏差によって、規制されている。スプリアスの種類は、高調波発射、低調波発射、寄生発射、および相互変調積であって、必要周波数帯に近接する周波数の電波の発射で情報の伝送のための変調の過程において生じるものを含まないことになっている。必要周波数帯に近接する周波数の発射を含まないというのは、そこに発射してよいということではなく、占有周波数帯幅の違反として取り締まるという意味である。スプリアスの強度の許容値については無線局の種類、電波の型式、周波数帯等によって差があるが、基本周波数の送信電力レベルの1万分の1~100万分の1以下にするように規制されている。ただし、救命ボート救命ブイ等で用いる非常用の送信設備についてはいっさいその制限を設けていない。

 また、スーパーヘテロダイン受信機で、局部発振器の高調波との和または差の周波数がたまたま中間周波数となる電波や、高調波そのものを受信する場合これをスプリアスという。これを除去する性能をスプリアス・レスポンスといって、受信機の性能の一面を示す数値である。受信機の局部発振器などから受信空中線を経て副次的に放射される電波の強さは、受信空中線と電気的常数の等しい擬似空中線回路を使用して測定した場合に4000マイクロマイクロワット以下にしなければならないと規定されている。

 電子レンジから放射するスプリアス発射のレベルについても細かく規定されているが、概略を述べれば、その電界強度が当該電子レンジから30メートルの距離で測定したとき、90メガヘルツから108メガヘルツまでおよび170メガヘルツから220メガヘルツまでの周波数帯では毎メートル30マイクロボルト以下、470メガヘルツから770メガヘルツまでの周波数帯では毎メートル100マイクロボルト以下でなくてはならないと定められている。電子レンジは電波を発射するための設備ではないが、それから漏洩(ろうえい)する電波がラジオやテレビジョン等無線設備の正常な使用に妨害を与えるおそれがあるために、製造業者や輸入業者に守るべき指針を示したものである。

[石島 巖]

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改訂新版 世界大百科事典 「スプリアス」の意味・わかりやすい解説

スプリアス
spurious

無線送信機において,所定の変調信号と変調方法により理論的に定められる周波数帯域の出力信号以外に出てくる信号成分。これが送信機自身または空中線などを通じて空間に放射されたものを不要放射spurious radiationという。また,通常の受信機においては所定の受信信号以外の信号に対しても受信できる場合があり,その受信の感度をスプリアス感度,またはスプリアス応答spurious responseといい,これが低いほうが妨害を受けにくい。
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