翻訳|detector
検波を行う装置。主として振幅変調波から変調信号を取り出す装置をいうが、周波数変調波や位相変調波を復調する装置も検波器ということがある。
振幅変調波からその変調信号を検出するには、非直線回路を通して整流する必要がある。受信機などで、受信アンテナに誘起されたきわめて微弱な電波を増幅して検波する場合には、効率のよい二乗検波が用いられ、送信機の変調度の測定などのように比較的大きな入力が得られる場合には直線検波が用いられる。非直線素子として従来は二極真空管その他の真空管が用いられ、グリッド検波、プレート検波、再生検波、超再生検波など、感度がよいことを追求した検波器が考案された。
1960年ごろからトランジスタや電界効果トランジスタなど良質な高周波増幅用の集積回路を用いて容易に高い利得(入出力の比)を実現できるようになると、ゲルマニウムやシリコンの整流素子(シリコンダイオードなど)が検波器として使用されるようになった。
[石島 巖]
振幅変調波から信号波を検出する過程は概略次のようになる。振幅変調の電波は、信号の強弱に対応して搬送波の振幅が変化するものと常識的には考えられている。しかし、実際には振幅変調では信号波の振幅と周波数の変化に伴って、搬送波の両側に上側波帯と下側波帯という二つの周波数の電波が発生し、この両方の側波帯と搬送波を合成加算すると、あたかも搬送波の振幅が変化したかのようにみえるのである。このような電波を受信し、適当な電圧レベル(約1ボルト程度が適当)まで増幅してから、ダイオードのような入力電圧対出力電流の特性が二次曲線を示す素子で整流すると、そのゆがみをもった整流特性により、出力側には搬送波、信号波(振幅がほぼ2乗になっている)、搬送波の高調波、搬送波に信号波を加えた周波数、搬送波から信号波を引いた周波数、搬送波に信号波の高調波群を加えた周波数群、搬送波から信号波の高調波群を引いた周波数群などのすべてを含んだ周波数群が発生する。これを信号周波数だけが通過できる低域濾波器(ろはき)で濾波すれば目的の信号波が検出できるのである。検波とは、振幅変調波を単に整流する行為ではなく、信号のレベルを、ダイオードの非直線特性にあうようなレベルに調節して整流したあとで、不要な高調波を濾波して元の変調信号を再生させる回路ということができる。
[石島 巖]
周波数変調は、実質的に、信号の変化に対応して搬送波の周波数が変化するものと考えられる。これを振幅変調の検波器だけで復調することはできない。それゆえ、周波数変調波を復調するには、最初に搬送波の周波数変化を、搬送波の振幅変化に変換する必要がある。
その一つの方法として、同調回路などの周波数特性(入力電圧は一定でも周波数が違えば出力電圧が変わる特性)のスロープを利用して周波数の変化を振幅の変化に変換することができる。この出力は事実上の振幅変調波となるので、これを二乗検波その他の振幅変調用の検波器を用いて検波すれば、周波数変調波を復調することができるのである。フォスター・シーリーの回路も、この種類に属する復調回路であり、比検波器という回路の復調原理もこれに属するものである。比検波器はNTSC方式のアナログのテレビジョン受像機の音声検波回路としてよく使用された。この検波器は、入力周波数変調波に振幅の変化があっても影響を受けにくいという性質があって、映像を振幅変調で同時に送信するテレビジョンシステムには好都合な検波器であった。
[石島 巖]
1970~1990年代に、マイクロ波による多重通信や、地球環境観測衛星によるデータ伝送、CS衛星を利用するハイビジョンの伝送から携帯電話に至るまで、デジタル伝送が盛んになってきた。デジタル伝送は回線の伝送品質の変動に対して影響を受けにくい性質を有するばかりでなく、高密度の多元接続にも適するという利点をもっている。変調型式としては位相変調方式の一つであるPSK(フェイズ・シフト・キーイングphase shift keying)、またはMSK(ミニマム・シフト・キーイングminimum shift keying)が最適であり、さらに数種類のバリエーションもある。この変調は電波型式G1D(電波法施行規則第4条の2に規定されている電波の型式の表示)のグループに属する変調方式で、デジタル符号を構成する信号が存在する期間だけ搬送波の位相を一定の位相角だけ変化させる変調方式である。位相変調は位相角だけを変化させるので、電波の占有周波数帯幅は広がらないように思えるが、周波数変調と同様に信号の伝送速度(ビット/秒)に比例して電波の幅も拡大するのである。この幅は同じ信号を振幅変調で送信したときの占有幅の約10倍(正確には変調指数倍)程度にもなるので、周波数の利用効率からみれば得策ではない。このようなぜいたくな通信方式を使用できるようになったのは、マイクロ波通信技術の発展と時を同じくして、通信衛星が出現して、電波の見通し距離外にマイクロ波を中継できるようになり、広帯域の利用が可能となったことや、光ファイバー通信網により広帯域な情報ハイウェーが確保されたことによる。位相変調によって伝送される被変調波から符号(データ)を復号するのが位相弁別器である。復号には原理的に周波数変調の場合と同じように、到来波の変調による位相の差を電圧の差に変換する機能が必要である。具体的には、到来する電波の周波数に等しく、変化を続ける位相のうち変調によって変移したほうの位相に固定した周波数を受信機の側で発生させ、これと到来電波を合成するのである。信号が存在している期間は両者の位相が整合するため重畳して振幅が大きくなり、信号が存在しなかった期間では両者が逆位相になるため振幅が減少する。このような信号を振幅変調波とみなして検波すれば目的の符号が再生される。このような回路構成の装置を位相弁別器と称するのである。位相変調において、信号によって位相を180度移相する方式を2相位相変調、信号のレベルに従って位相を90度の倍数のどこかに移相する方式を4相位相変調といい、16相、32相、256相程度の方式まであって、移相の相数の大きいものほど1回の移相によって伝達できるビット数が多くなる。16相の位相変調では、1回の移相が8ビットの信号を伝送するのと同じ意味をもち、一瞬に1バイトの符号が伝送できる。地上デジタル放送は振幅変調と位相変調を組み合わせたX7Wという電波型式である。変調方式は64QAM(QAM=直交振幅変調quadrature amplitude modulationの略称)であり、位相変調部分は64相にもなっている。このように伝送速度をきわめて高くできることが位相変調を賞用する一面の理由であり、帯域圧縮技術と両輪となって通信技術はますます発展している。多相の位相変調波に対応する位相弁別器の構造についてもひとくふう必要であるが、本稿においては割愛する。さらにデジタル通信では、使用する変調方式にかかわりなくビット同期を確実に行うことが必要である。これには送信側と受信側のサンプリング(標本化)のためのクロック(基準パルス)が同期していることや、送信側が送り始めた信号の最初のビットがどれであるかを感知することが必要である。また、伝送がフレーム(概念上の枠。デジタル信号を適切なくぎりまで一括して送信するデータの1区間)であるならばフレームの先頭ビットがどこから始まるのかを感知する方法というような細かな取り決め(プロトコル)が必須(ひっす)であって、どれ一つもおろそかにできない。携帯電話のような小型の機器でも送信部分、受信部分のほかに、このようなデリケートな装置を搭載しているためデータの送受もでき、電子メールなどの送信が可能となるのである。
[石島 巖]
…また電波の存在は,アンテナに受信される電波を増幅し,これをダイオードで検波することによって調べることができる。この回路を検波器という。
[電波の伝わり方]
電波はその伝わり方によって,直接波,反射波,屈折波,回折波,地表波,散乱波などに分類される。…
※「検波器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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