中国料理の材料の一種で,つばめの巣に次ぐ高級品。本来,サメのひれで中国では魚翅(ユイチー)と呼び,日本では習慣的にふかのひれと呼んでいる。つばめの巣もふかのひれも,そのもの自体に味はないが,つばめの巣に比べて,ふかのひれは他のものの味をよく受けつけるのでスープに入れるとよく,しょうゆ味の煮汁で煮込んだ紅焼にも用いられる。白翅と黒翅に大別され,白翅はメジロザメ,マブカザメ,黒翅はアオザメ,ヨシキリザメ,ネコザメからつくられる。1尾のサメから背びれ1枚,胸びれ2枚,尾びれ2枚がとれ,尾びれが最もよいとされる。そのまま干したものを全翅といい,高級料理に用いるが,ばらばらのものは散翅といい品質は劣る。魚翅が文献に出るのは比較的新しく,明代の《本草綱目》(1596)の鮫魚の項に,南人が珍とすると簡単に記してあるだけである。しかし清代の《随園食単》や,《本草綱目拾遺》(1765)では詳しく説明されているので,このころには宮廷や上流階級の間で用いられていたものであろう。
執筆者:田中 静一
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