鳩の形につくった笛玩具(がんぐ)。素焼にした土製のものが多い。尾の先に吹き穴があり、これを吹くと鳩の鳴き声に似た音を出すので、古くから遊び道具として親しまれてきた。京の伏見(ふしみ)焼、江戸の今戸焼のものなどが名高い。「鳩胸」ということばに結び付けて、幼児が食事の際これを食膳(しょくぜん)に置けば食物が胸につかえないという俗信があり、そのまじないにも用いられた。
現在も郷土玩具として各地にみられる。青森県弘前(ひろさき)市産のものは、これをくわえて吹けば乳幼児の虫封じに効くといわれてきた。また鳩は昔から八幡宮(はちまんぐう)の使いとされてきたことから、京都府石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)、大分県宇佐神宮、鹿児島県鹿児島神宮(国分八幡(こくぶはちまん))などでは、それぞれ鳩笛が売られている。宇佐神宮の鳩笛は白色の小型の素焼で、同神宮の鳩替え神事に用いられ、幼児ののど詰まり除(よ)けのまじないとされる。鹿児島神宮の鳩笛は赤、黄、緑で鮮やかに彩色されている。
[斎藤良輔]
…今日では,吹口と指穴があって正確な音程を奏すことができ,ソプラノからバスまで各種作られている。同種異形の楽器は世界各地に分布し,郷土玩具の鳩笛も同類のもの。【中村 とうよう】。…
…管端の1個所を斜めにそいでつくったナイフ・エッジがエア・リードの発生を促すのである。 エア・リードの利用は管以外のさまざまな形をした吹奏楽器にもみられ,オカリナ,郷土玩具の鳩笛がその例である。なお〈フルート〉という言葉を広義に用いれば,これらエア・リード楽器すべてが包括される。…
※「鳩笛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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