鵼・鵺(読み)ぬえ

精選版 日本国語大辞典 「鵼・鵺」の意味・読み・例文・類語

ぬえ【鵼・鵺】

[1] 〘名〙
① 鳥「とらつぐみ(虎鶫)」の異名。《季・夏》
※古事記(712)上・歌謡「青山に 奴延(ヌエ)は鳴きぬ さ野つ鳥 雉(きぎし)は響(とよ)む」
② 源頼政が紫宸殿の上から射落としたという怪鳥。頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎に似、声は虎鶫(とらつぐみ)に似るという。
平家(13C前)四「鵼といふ化鳥(けてう)禁中にないて、しばしば宸襟をなやます事ありき」
③ (②から転じて) どちらともつかないあやしげなもの。正体がはっきりしない人物・事物やあいまいな態度にいう。
随筆・独寝(1724頃)下「かしらは薬鑵、髪は三輪索麺、鵺の様なる年になるまで、世に面白いと云事しらず」
[2] (鵺) 謡曲。五番目物。各流。世阿彌作。「平家物語」による。旅僧が摂津国蘆屋の里で一夜を明かしていると、空舟(うつおぶね)に乗って異様な者がやってきて、自分は近衛天皇の時、頼政の矢にあたって死んだ鵺の亡霊だといい、僧の供養を頼んで海上に消え去る。その夜、僧の読経で、鵺は元の姿となって、仏果を得たことを喜び頼政に殺された時の有様を語る。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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