トラツグミ(その他表記)White's ground thrush
Turdus dauma

改訂新版 世界大百科事典 「トラツグミ」の意味・わかりやすい解説

トラツグミ (虎鶫)
White's ground thrush
Turdus dauma

スズメ目ヒタキ科の鳥。全長約30cm,日本のツグミ類中では最大。体上面は黄褐色地に黒色の三日月斑が多数あり,のどから腹にかけては汚白色地に黒色の三日月斑が散在している。翼の裏側には白色と黒色の太い横帯があり,飛んだときによく目だつ。シベリアから東南アジア,オーストラリアにかけて広く分布し,日本では北海道から九州までの各地に漂鳥として生息する。低木層がよく茂った暗い林に好んですみ,林内にすみついていることが多いので姿を見かけるのは比較的少ない。おもに地上で採食し,ミミズ昆虫主食にしている。4~6月の繁殖期には,夜間,ヒーヒーと口笛に似た声でさえずる。曇りの日や暗い林では,日中でもさえずることがある。この気味の悪いさえずり声から,ヌエ,ヌエジナイと呼ばれることもある。巣は木のまたにコケ枯葉を使ってつくり,わん形をしている。1腹の卵数は3~5個,育雛(いくすう)は雌雄交替で行う。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トラツグミ」の意味・わかりやすい解説

トラツグミ
Zoothera dauma; scaly thrush

スズメ目ツグミ科。全長 30cm。背面は黄褐色と黒色の三日月斑が一面にあり,下面は白く,喉,胸,脇にも黄褐色と黒色の三日月斑がある。これは和名のように虎模様にも,英名のように鱗模様にも見える。低山帯のよく茂った落葉樹林針広混交林にすみ,繁殖期は夜間に「ひーひょー」と聞こえる独特の寂しい声で鳴く。その昔,暗くて姿が見えないので鵺(ぬえ)という妖怪が鳴いていると考えられた。冬季には都市の公園などにも姿を見せる。おもに昆虫類を食べる。シベリア南部から朝鮮半島,日本を含めたオホーツク海沿岸域にかけての地域と,ヒマラヤ山脈から中国南西部に繁殖分布する。非繁殖期は,北部に生息するものはインドからフィリピンスマトラ島などに渡って越冬する。日本では全国各地の山林で繁殖し,寒冷地のものは冬季温暖な地方に漂行する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラツグミ」の意味・わかりやすい解説

トラツグミ
とらつぐみ / 虎鶫
White's ground thrush
[学] Turdus dauma

鳥綱スズメ目ヒタキ科ツグミ亜科の鳥。日本を含む東アジアからオーストラリアにかけて広く分布しており、冬季は暖地へ渡るものがある。全長約29センチメートル。上面と胸、わきは、褐色と黄色の斑(はん)があり、和名の由来となっている。腹は白く、翼の裏は白と黒2本ずつの帯模様があり、飛ぶときに目だつ。暗い森の中にすみ、各種の木の実、草の根などの植物質のほか、昆虫、ミミズなどの動物質もとる。日本では5~7月に森林の中の樹上に巣をかけ、3~5卵を産む。夜または曇りの日に、ヒー、ヒョーというもの寂しい声でさえずり、この声が伝説上の化け物「ぬえ」の正体であるとされる。

[竹下信雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「トラツグミ」の意味・わかりやすい解説

トラツグミ

ヒタキ科の鳥。翼長15cm,日本のツグミ類中最大で,背面は黄褐色地に黒斑がある。アジア東・南部,ニューギニア,オーストラリア等に分布し,北部のものは冬南へ渡る。日本では北海道から九州で繁殖し,冬は暖地の林にいる。奄美大島の亜種オオトラツグミ(絶滅危惧II類(環境省第4次レッドリスト))は別種とする説もある。地上でミミズや昆虫等を食べる。夜間やうす暗い日に,ヒー,ヒョーと口笛のような声で鳴く。いわゆる鵺(ぬえ)の声の本体はこの鳥といわれる。
→関連項目

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のトラツグミの言及

【ぬえ(鵼∥鵺)】より

…(1)トラツグミの方言。ヌイ,ヌエツグミ,ヌエドリ,オニツグミ,チョウマンなどとも呼ばれ,雪どけころから5,6月ころに陰気な声で夜鳴くことから,古来,不吉で無気味な鳥とされてきた。…

※「トラツグミ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android