改訂新版 世界大百科事典 「麻の葉模様」の意味・わかりやすい解説
麻の葉模様 (あさのはもよう)
6個の菱形の各頂点が中心となる1点で接し,さらに各頂点から中心点に直線を引いた幾何学文様。普通連続させ麻の葉つなぎとして用いる。東西に古くからみられる文様で,日本では平安時代の仏像の衣に切金(截金)(きりかね)で表されているのが古く,室町時代の繡仏や幡(ばん)の地縫いにもみられる。近世になって,タイマの葉に似ているところから〈麻の葉〉と呼ばれるようになり,庶民的な文様として親しまれた。応用形や変化形も多く,染織品,欄間,千代紙などにも見られる。
執筆者:一条 薫
風俗
アサはじょうぶに直立して生長するところから,これにあやかって江戸時代から子どもの着物の模様,とくに下着類に多く用いられた。これを絞(しぼり)にした麻の葉鹿の子は半四郎鹿の子という。1809年(文化6)3月,八百屋お七の追善興行を江戸森田座で行った際,5世岩井半四郎がお七を演じて大好評をえたとき用いた模様がそれで,江戸の女たちの半えり,下着,そで,すそまわしなどに流行した。また大坂では文政年間(1818-30)嵐璃寛が《染模様妹背門松》を演じたとき,お染の役で好評をえたところから京坂に流行し,お染形ともいわれた。
執筆者:遠藤 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報