生まれたばかりの新生児に初めて着せる衣服。産衣とも書き、古くは襁褓(むつき)ともいった。江戸時代から用いられた麻の葉模様の着物は、乳児が麻のように、じょうぶでまっすぐ成長するようにとの願いが込められているもので、いまも産着用として市販されている。また明治中期までは厄除(やくよ)けとして、産着の背に背守り縫いを五色の絹糸で縫う習わしがあった。生地は保温性があり、肌ざわりがよく、洗濯がきき、清潔さを保ちやすいものがよい。木綿が最良で、吸湿性のあるガーゼ、晒(さらし)、メリヤス、タオル、綿ネルなどが適する。また形のうえでは着脱に便利で、運動を妨げない、ゆったりしたものを選ぶ。色は白を主とし、淡桃色、クリーム、水色などがよい。着物式のものには単(ひとえ)、袷(あわせ)、綿入れ仕立てがあり、広袖(そで)、後ろ紐(ひも)付きにし、着替え、おむつ交換が容易なようにする。最近は縫い目を少なくしたり、外側に出したりした改良産着も考案されている。現代では、仕立て、洗濯の簡便な、洋服式のものが一般化している。襟や飾りのないものにし、前打合せの開きを留めるのにボタンを避け、細いテープを用いる。フレンチ袖の肌着の上にラグラン袖の下着を着せ、ラグラン袖か、低い袖山のベビー服を着せるが、寒い季節には胴着を間に着せて調節する。乳児の衣服は通常、大人より1枚少ないぐらいに着装させ、過保護な厚着の習慣は避けるのが望ましい。
[岡野和子]
産湯(うぶゆ)のあとで着せる着物をいうのが普通の考え方であるが、この場合産湯ということばに問題がある。現在は生後すぐに浴びさせる湯をさしているが、伝統的な考え方では、誕生後の儀礼的行事として現在湯初(ゆぞ)めといっている3日目の「湯浴みせ」が産湯であり、そのあと着せる着物をウブギというのが適当かと思う。現在でも古い風習を知っている老人に聞くと、生後3日目ぐらいまでは、ボボサヅツミとかコロバカシ、またはマエカケヅツミなどといって、ただの布や綿などに包んでおき、3日目に初めて袖のついた着物を着せて、これをウブギとかオボギとかいったという。このほかミツメギモノ、テヌキ、テトオシ、ソデツナギ、テツナギなど各地に名称は多いが、要するに袖のあること、手を通すということを強く表現した方言が多い。新潟県の佐渡ではニンジュギモンとよぶが、この地方で「人衆(にんじゅ)にしてくれ」というと仲間に入れてくれという意味であった。すなわち、ウブギは人間の仲間に入るときの着物であり、成人の側からいえば、人間として認知したときの着物ということになる。
[丸山久子]
産湯のあとで着せる着物。または宮参りの晴着をいうところもある。産着は生まれる前から縫っておくものではないという俗信はひろく,たいていは生まれてからしたくした。以前は三日湯のあとに着せる地方が多く,それまではボボサツツミなどといって,ぼろや腰巻,前掛けなどで包んでおくほうがよく育つといわれた。生まれたばかりの命ははかなく,悪霊に魅入られやすいので,その目を避けるためにぼろに包んだようである。三つ目祝として産婦の里方から贈られた袖のある着物を着せることは,生誕後の一つの儀式となっていた。これをミツメギモノとか三日衣装とかいう。このほかに,テヌキ,テツナギなどという名称があって,手のたいせつさとともに,手を通す袖を重視していることがわかる。佐渡で産着をニンジュギモンというのは,村の人衆に加えるという意味で,この着物がたいせつなものであることをあらわしている。魔よけのため麻の葉模様,ウコン染,紅染が好まれ,背には背まもりをつけた。
執筆者:大藤 ゆき
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