黄金山産金遺跡(読み)こがねやまさんきんいせき

国指定史跡ガイド 「黄金山産金遺跡」の解説

こがねやまさんきんいせき【黄金山産金遺跡】


宮城県遠田郡涌谷(わくや)町涌谷にある金を産出した遺跡。『延喜式神名帳』に「陸奥国小田郡黄金山神社」と記述され、日本で初めて金を産出した場所として知られる黄金山(こがねやま)神社の境内にある。749年(天平21)に東大寺大仏の塗金のための黄金が不足していたときに、陸奥国守百済王敬福(くだらのこにきしきょうふく)が管内の小田郡(現在の遠田郡)で産出したものとして900両(約13.5kg)の黄金を聖武天皇に献上し、これによって大仏が無事完成したというエピソードが伝えられている。これが日本で金が産出したという最初の記録である。1810年(文化7)、国学者・沖安海が『陸奥国黄金山神社考』でその産出場所は遠田郡の黄金山神社であるとし、明治になって大槻文彦が『陸奥国遠田郡小田郡沿革考』でその説を補強した。1957年(昭和32)に東北大学が現在の神殿とその背後の玉垣付近を発掘調査し、奈良時代の建築物跡と屋根瓦が発見され、さらに地質調査によって涌谷町の土質には純度の高い良質の砂金が含有されることが判明した。ほかに、奈良時代の軒瓦(のきがわら)や「天平」と箆書(へらが)きされた文字瓦、瓦製宝珠の破片などが出土している。1959年(昭和34)、黄金山神社付近一帯が「産金遺跡」として県指定の史跡となり、1967年(昭和42)に国指定史跡となった。黄金山神社境内を流れる小川からは、今でも少量の砂金が検出されるという。JR石巻線涌谷駅から車で約12分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の黄金山産金遺跡の言及

【涌谷[町]】より

…70年以降,石巻市方面から電子部品などの工場進出がみられるが,85~95年の人口は微減の傾向にある。日本で初めて金を産出した地として知られ,町西部の黄金山神社には黄金山産金遺跡(史)があり,《万葉集》にも詠われている。北部には縄文時代中期の長根貝塚(史)もある。…

※「黄金山産金遺跡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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