1票の格差(読み)いっぴょうのかくさ

共同通信ニュース用語解説 「1票の格差」の解説

1票の格差

衆院小選挙区、参院選挙区ごとの国会議員1人当たりの有権者数が異なることで、投票価値に不均衡が生じる問題。「法の下の平等」を定めた憲法に反するとして、選挙のやり直しを求める訴訟が繰り返されてきた。最高裁は2009、12、14年衆院選と10、13年参院選を「違憲状態」と判断した。過去国政選挙を無効とした最高裁判決はない。今回の衆院選では、格差是正のための小選挙区定数10増10減」などを受けた新区割りが適用された。

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「1票の格差」

議員1人当たりの有権者数が選挙区によって異なるため、1票の価値に格差が生じる問題。訴訟では投票価値の不平等が著しければ「違憲状態」、さらにそれを国会が適切な期間内に是正しないと「違憲」、その上で選挙をやり直しても公益を著しく害さないと判断すれば「無効」の判決になる。参院選格差訴訟で、最高裁が違憲の判断を示したことはない。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「1票の格差」の意味・わかりやすい解説

1票の格差
いっぴょうのかくさ

小選挙区制の選挙などで,選挙区により議員 1人あたりの有権者数が異なるため,有権者のもつ 1票の価値に地域差が生じること。日本では憲法14条が定める「法のもとの平等」に反するとして,是正を求める訴訟が繰り返されてきた。最初に最高裁判所が違憲判決を出したのは 1976年で,1972年の衆議院議員総選挙の格差 4.99倍をめぐる裁判だった。その後もたび重なる違憲,違憲状態という司法の判断がくだされ,政府も選挙区の人口に応じた定数の是正を 1986,1992,2002年などに行なっている。近年では格差が 2.4倍をこえた 2012年12月の衆議院選挙で,最高裁が 2013年11月に違憲状態との判決を出した。同じ衆議院選挙をめぐっては,広島高等裁判所で選挙を無効とする厳しい判決も出ている。2013年7月の参議院議員通常選挙にも訴訟が相次ぎ,2013年中に出された一審判決に合憲はなく,違憲,選挙無効などの判断がくだされた。4.7倍超の格差を司法が強く批判したかたちとなった。

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百科事典マイペディア 「1票の格差」の意味・わかりやすい解説

一票の格差【いっぴょうのかくさ】

国政選挙などで有権者の票の価値が,選出される議員一人当たりの有権者数によって異なり,有権者数が少ないほど価値が増し,多数になるほど価値が下がる現象選挙区の区割りや議員定数変更などの調整が求められているが,日本の国会の場合,調整はきわめて不十分なまま推移している。2011年3月,最高裁判所大法廷は,09年の衆議院選挙における一票の格差は,憲法違反の状態という判決を示した。その後,一票の格差が最大で2.43倍だった2012年の衆議院選挙についても,2013年3月,弁護士グループが起こしていた無効(やり直し)訴訟16件で,14件について〈違憲〉とする各高裁の判決が出そろい(うち2件は〈選挙無効〉の判決),国会はまったなしの選挙改革を迫られている。

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知恵蔵 「1票の格差」の解説

1票の格差

民主主義の原則は1人1票で、1票の重さは同等であるべきである。しかし人口変動に合わせて議員定数の再配分や、選挙区の区割りの変更が行われない限り、1票の格差が生じてくる。例えば、2004年の住民基本台帳人口(3月31日現在)によると最も人口が少ない選挙区が徳島1区の26万5144人、最も人口が多いのは兵庫6区の56万9911人となり、衆院300小選挙区の1票の格差は2.15倍となった。このような1票の格差を解消するために、議員定数の再配分や選挙区の区割りの変更を行うことを、定数是正という。

(蒲島郁夫 東京大学教授 / 2007年)

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