日本大百科全書(ニッポニカ) 「Jカーブ効果」の意味・わかりやすい解説
Jカーブ効果
じぇーかーぶこうか
J-curve effect
変動相場制下で、為替(かわせ)相場の変化が貿易収支の不均衡を短期的にさらに拡大させることによって為替相場のオーバーシュートを引き起こす効果をいう。為替相場の変化は一般に輸出入価格を変化させて輸出入数量の変化を誘い、貿易収支を均衡させる働きをもつとされるが、すぐにはそのような効果は現れない。例として国際収支が赤字で円安となるケースを取り上げてみよう。まず輸出面では、外貨建て価格が下がるが、数量が増えるまでには時間がかかるので、それまでは外貨表示の輸出金額は減少する。輸入面でも、円建て価格が上がっても数量はすぐには減らないので、外貨表示の輸入金額はあまり減少しない。こうして貿易収支は短期的にはかえって悪化し、円相場をさらに下落させる。しかし、時間がたてば輸出数量の増加とともに輸出金額は増加に転じ、輸入も数量の減少によって減り始める。その結果、貿易収支は徐々に均衡に向かい、やがて黒字化する。為替相場はそれを反映して円安から円高へ反転する。このような動きがJ字型を呈するところからJカーブ効果とよばれる。Jカーブ効果は1967年のポンド切下げのときの説明に使われたのが最初であり、1977~78年(昭和52~53)に連続的に起こった激しい円高の説明にも使われている。
[土屋六郎]