日本大百科全書(ニッポニカ) 「X線分析」の意味・わかりやすい解説
X線分析
えっくすせんぶんせき
X-ray analysis
X線を利用した分析法の総称で、主として、蛍光X線の発生、X線の吸収・散乱などの諸現象が利用されている。
蛍光X線分析
試料にX線を照射した際に、試料中の元素から発生する元素固有の蛍光X線スペクトルの波長とその強度から、元素の種類と含有量を知る方法。発生したスペクトルの測定にはX線分光器および種々のX線計数装置を用いる。元素に固有な蛍光X線の発生には電子線や放射線も使われるが、直径1マイクロメートル以下の電子線束を試料表面の任意の場所に照射し、照射された微小部分からの蛍光X線を利用する方法をX線マイクロアナリシスという。また、この一連の装置を電子線マイクロアナライザー(EPMA)とよぶ。試料の微小部分の分析ができる点、試料上を電子ビームで走査することにより、試料表面の、ある元素の濃度分布を一次元または二次元的に求められる点などに特徴がある。
[高田健夫]
X線吸収分析
照射したX線が試料中の元素によって吸収される現象を利用した方法をいい、単色X線や連続X線の吸収量から定量を行う。また、試料中を透過したX線を写真に撮影して試料の組織を調べる方法をラジオグラフィーとよんでいる。
[高田健夫]
X線回折分析
結晶は原子が三次元的に規則正しく配列しており、これに単色X線を照射すると、各原子によって散乱されたX線の間に干渉がおこる。この回折現象を利用する方法である。得られるX線回折格子図形は、結晶形、結晶空間に特有であり、結晶性物質の同定、定量、構造解析を行うことができる。
X線の測定には通常の光吸収分析と同様に、線源、分光器、検出器が必要である。線源にはX線管が用いられる。分光器には、蛍光X線分析では石英、フッ化リチウムその他の単結晶が、X線回折では薄い金属箔(はく)などが用いられる。検出器はその目的や波長、装置の種類などによって写真、比例計数管、ガイガー‐ミュラー計数管、シンチレーション計数管、半導体検出器など種々のものが用いられる。
X線を用いた分析法は、試料を分解させたり破壊したりしないで分析できるのが特徴であり、貴重な試料の分析や、痕跡(こんせき)量の分析にはとくに利用価値が高い。高性能のX線分光器の開発とコンピュータとの連結で測定の自動化、迅速化が進み、分析法として大きな役割を担っている。
[高田健夫]
『合志陽一・佐藤公隆編『エネルギー分散型X線分析――半導体検出器の使い方』(1989・学会出版センター)』▽『合志陽一監修、佐藤公隆編『X線分析最前線』改訂版(2002・アグネ技術センター)』▽『日本分析化学会・X線分析研究懇談会編『X線分析の進歩』各年刊(アグネ技術センター)』