比例計数管(読み)ヒレイケイスウカン(英語表記)proportional counter

デジタル大辞泉 「比例計数管」の意味・読み・例文・類語

ひれい‐けいすうかん〔‐ケイスウクワン〕【比例計数管】

放射線測定器の一。ガイガーミュラー計数管とほぼ同じ構造で、メタンアルゴンなどの気体を封入した金属円筒を負極、その中心に張った針金陽極とする。ガイガーミュラー計数管に比べてやや低い電圧をかけ、放射線が入射すると気体が電離され、電場で加速された電子が連鎖的にイオン対を生じる。放射線のエネルギーはイオン対の数と比例するため、電極間の電流を計測することで、放射線のエネルギーを測定することができる。プロポーショナルカウンター

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改訂新版 世界大百科事典 「比例計数管」の意味・わかりやすい解説

比例計数管 (ひれいけいすうかん)
proportional counter

気体の電離(イオン化)を利用した放射線検出器。同様の検出器として,ほかに電離箱とガイガー=ミュラー計数管があるが,これらはおもにその動作の違いから区別されている。電離箱では,放射線による気体の電離で生じたイオン対(電子と正イオン)が過不足なく電極に集められるのに対して,比例計数管では,放射線による電離で最初に生じたイオン対の102~104倍の多数のイオン対が電極に収集される。これは,陽極となっている中心線に比較的高い電圧が加えられているために,その近くに強い電界がつくられていることによる。放射線による電離でつくられたイオン対のうち,電子は,静電引力により陽極である中心線に向かって引かれるが,その途中,強い電界によって急激に加速されるので,気体分子に衝突するとこれらを電離させて,次々に新たなイオン対をつくり出す。最終的に電極に集められるイオン対の数は,放射線作用によって最初に生じたイオン対の数に比例しており,動作電圧が一定であればその比例定数倍率)は一定である。
ガイガー=ミュラー計数管
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化学辞典 第2版 「比例計数管」の解説

比例計数管
ヒレイケイスウカン
proportional counter

放射線測定装置の一種で,計数管に入射した放射線のエネルギーに比例した大きさの電圧パルスを与えるものをいう.通常,円筒状の陰極の中心に直径0.1 mm 以下の細い陽極線を配した構造になっている.陽極のまわりの強い電場のため,入射放射線によってつくられたイオン対のうちの電子は,陽極に向かって強く引きつけられ,その移動の際,封入ガス分子と衝突を繰り返してこれを電離し,結果として一次イオン対の数に比例した 103~106 倍の電子増殖を得ることができる.比例計数管はα線やβ線のような荷電粒子線ばかりでなく,封入ガスに中性子と核反応を起こして荷電粒子を発生するものを使用すれば,中性子も検出可能である.また,比例計数管のエネルギー分析能力を利用し,特性X線や低エネルギーγ線のエネルギー測定や,これを利用した元素分析も行うことができる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「比例計数管」の意味・わかりやすい解説

比例計数管
ひれいけいすうかん
proportional counter

放射線のエネルギー損失を測定する装置の1種。放射線による気体の電離現象を利用する。通常,円筒形容器の内壁を陰極に,中心軸に張った細い金属線を陽極とし,容器内に PRガス (アルゴン 90%,メタン 10%) などを入れる。両極間に適当な強さの直流電圧を加えておくと,放射線がガスを電離したとき生じる電子と陽イオンとがそれぞれ陽極,陰極に引かれて加速され,ガスの原子に衝突して2次的にイオンをつくる。生じたイオンの総数は放射線が直接つくったイオンの数に比例する。したがって両極間には,放射線の電離損失に比例して増幅された電流が流れる。放射線が円筒内のガスの中で吸収されるときには,放射線のもっていたエネルギーがはかられる。印加電圧が強すぎるとエネルギーの測定に不向きとなり,ガイガー=ミュラー計数管と同様に入射個数の情報しか得られなくなる。

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百科事典マイペディア 「比例計数管」の意味・わかりやすい解説

比例計数管【ひれいけいすうかん】

構造・配線ともガイガー=ミュラー計数管とほとんど同じで,金属円筒と中心導線の負電圧をそれより低くしたもの。荷電放射線粒子が入射したとき生じる放電電気量は,粒子が電離作用によって経路につくる正負のイオン対の数に正しく比例するのでこの名がある。したがって電離作用の強弱によって粒子の種類を区別でき,また電離作用の弱いβ線,γ線が存在するときも電離作用の強い陽子,α線だけ選び出して計数できる。
→関連項目計数管

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世界大百科事典(旧版)内の比例計数管の言及

【電離箱】より

…電極間の電圧を増加させると電離した際に発生した電子がガスと衝突して二次電子が発生し,その数は荷電粒子がガス中で失ったエネルギーに比例するので,粒子の計数とエネルギーの推測が可能になる。このような電離箱は比例計数管と呼ばれる。さらに電圧を上げると初期のエネルギー損失に関係なく大量の二次電子が発生するようになるが,このような電離箱はガイガー=ミュラー計数管と呼ばれ,電離作用の弱いβ線などの検出に適している。…

※「比例計数管」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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