日本大百科全書(ニッポニカ) 「A-380」の意味・わかりやすい解説
A-380
えーさんびゃくはちじゅう
ヨーロッパの航空機メーカー、エアバス社が2002~2021年に生産していた世界最大の旅客機。全長72.7メートル、翼幅79.8メートル、全高24.1メートルで、最大853の座席を設けることが可能。航続距離は1万2000キロメートル以上。総2階建てで、生産終了時点で、世界最大・最新鋭の旅客機であった。かつて大型旅客機の代表だったアメリカのボーイング社製ジャンボ機(747型大型ジェット旅客機)より床面積が約1.5倍広く、機内にバーラウンジ、ベッド、シャワー室などを設置でき、「空飛ぶホテル」と称された。価格は1機約3億2700万ドルだった。世界的な航空需要の増大をにらみ、エアバス社が世界の主要都市間の輸送の担い手として開発。2005年に初飛行し、エミレーツ航空(アラブ首長国連邦)、カンタス航空(オーストラリア)、ルフトハンザ・ドイツ航空、大韓航空、マレーシア航空、タイ国際航空など多くの航空会社が採用し、世界に約250機が運航していた。日本では2008年(平成20)、シンガポール航空が成田―シンガポール間に就航させ、全日本空輸も保有するA-380を成田―ホノルル間に就航させている。ただ、運航コストがかさむ大型旅客機から中・小型機へのシフトが国際的に進んだうえ、「飛び恥」ということばに象徴される環境意識の高まりを受けて、フライトを敬遠する風潮や、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行による航空需要の低迷もあって、2021年に生産を終了した。
[矢野 武 2023年2月16日]