日本大百科全書(ニッポニカ) 「ASCマーク」の意味・わかりやすい解説
ASCマーク
えーえすしーまーく
自然環境や社会に与える影響に配慮して養殖された水産物であることを示す認証表示。海のエコラベルとよばれるMSC認証(MSCマーク)の養殖版である。ASCはAquaculture Stewardship Council(水産養殖管理協議会)の略で、2010年に世界自然保護基金(WWF)とオランダの持続可能な貿易を推進する団体であるIDH(Dutch Sustainable Trade Initiative)の支援を受けて設立された。
養殖水産物は将来的に貴重な食糧としてよりいっそうの拡大が見込まれている。しかしその反面、養殖場建設による自然環境の破壊や水質汚染、薬物の投与、餌(えさ)となる生物の過剰利用、養殖場に持ち込まれる病害虫や逃げ出した養殖魚が外来生物として与える生態系への影響といった、多くの問題を抱えている。また、養殖業の劣悪な労働環境が社会問題となっている国も少なくない。
ASCはとくに問題と考えられる水産物を対象に、養殖業者、加工・流通業者を自然環境、法令、人権、労働の側面から審査し、責任ある経営と管理のもとで養殖された水産物であることを認証する。その水産物にはASCマークの表示が許される。認証の基準は、研究者や環境団体、生産者団体、流通関係者など養殖水産物の利害関係者からなるアクアカルチャー・ダイアログ(水産養殖管理検討会)という円卓会議の意見に基づいて策定される。2014年4月の段階で基準が設定済み、あるいは策定中の品目は、アサリ、アワビ、エビ、カキ、サケ、スギ、淡水性マス、ティラピア、パンガシウス、ブリ、ホタテ貝、ムール貝の12品目である。
[編集部]