知恵蔵 「BitTorrent」の解説
BitTorrent
BitTorrentでは、ファイルのダウンロード手順などが保存されている「torrent」ファイルをもとに「ピース」と呼ばれるダウンロードしたいファイルの一部を交換し合う。他のファイル交換ソフトのようにファイルとファイルを交換するのではなく、ファイルの一部をダウンロードしながら他ユーザーにファイルの一部を渡す仕組みになっている。すべてのピースをそろえればダウンロード完了となるため、参加ユーザーの誰もがファイル交換を補完し合いながら、全ユーザーへファイルが高速に行きわたる。自分が必要としない他のファイル交換に協力することはない。また、匿名性を保つ機能がないため、非合法のファイル交換はすぐに分かるようになっている。
BitTorrentを利用するには、BitCometなどのクライアントソフトが必要。クライアントソフトから「トラッカー(Tracker)」と呼ばれるサーバーに接続し、ダウンロードしたいファイルを持つ他ユーザー「ピア(Peer)」等からの情報を得た後、ダウンロード開始となる。「ピア」は、ダウンロードと同時に他の「ピア」にアップロードを行うが、この「ピア」を「リーチャー(Leecher)」と呼ぶ。なお、ダウンロードが完了した「リーチャー」は「ピース」を100%持っていることになるが、接続を切らずにおけば、自動的にピースの配布を行う「シーダー(Seeder)」となる。
BitTorrentによる技術を用いれば、動画などの大容量のデータを配信する場合でも、HTTPやFTPによるダウンロードのように特定のサーバーに負荷をかけることがない。また、ユーザーが増えるほど安定するため、今後の新たなコンテンツ配信手段として期待される。
ちなみに「Fedora Core Linux」などのLinuxのディストリビューションは既にBitTorrentで配布されている。国内でも慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでは、同技術を使った授業の映像配信実験を開始している。
(横田一輝 ICTディレクター / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報