fish protein concentrateの略で濃縮魚肉タンパク質のこと。鮮魚から食用を目的に衛生的に製造され,安価で貯蔵性に富み,原料魚よりタンパク質が高度に濃縮された製品で,MPC(marine protein concentrateの略)ともいわれる。世界人口の急激な増加に伴う食糧の不足,とくに発展途上国における動物性タンパク質の不足を解決する手段としてFAO(国連食糧農業機関)がこれを採り上げ,世界各国で研究が行われた。1960年代後半に,アメリカ,カナダなどで大工場も建設されたが,期待に反して発展途上国の消費が伸びず,行詰り状態にある。
製造法は,鮮魚をイソプロピルアルコールなど有機溶剤により直接脱水・脱脂する溶剤処理法と,酵素により魚体を液化し,脱脂後,乾燥する液化法に大別できる。表に,アメリカでレッドヘーク(メルルーサの仲間)から製造されたFPCの一般成分値を原料魚のものとともに示す。FPCは脂肪が少なく,乾燥粉末であるので長期貯蔵が可能であり,温和な条件で製造されるので,リジンやメチオニンの分解もほとんどなく,タンパク質の栄養価は魚粉に比べはるかに優れ,カゼインに匹敵する。食品素材として利用しやすいが,製造費が高くつくのが欠点である。近年エチルアルコールによりスケトウダラやイワシの肉を処理して粒状にした,マリンビーフと呼ばれる一種のFPCが開発された。
執筆者:山口 勝巳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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