イソプロピルアルコール(読み)いそぷろぴるあるこーる(英語表記)isopropyl alcohol

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソプロピルアルコール」の意味・わかりやすい解説

イソプロピルアルコール
いそぷろぴるあるこーる
isopropyl alcohol

正しくは2-プロパノールという。脂肪族飽和アルコール類の一つ。無色の特有なにおいをもち、水よりやや粘性のある揮発性の液体石油分解で得られるプロピレンを濃硫酸に吸収させ、これに水を作用させて製造する。水にもアルコール類にも炭化水素にもよく溶け、また引火性がある。イソプロピルアルコール蒸気を、加熱した酸化銅あるいは酸化亜鉛触媒上を通すと脱水素されてアセトンを生ずる。またイソプロピルアルコールの蒸気は、銀触媒上で酸素により部分的に酸化されてアセトンとなる。イソプロピルアルコールはアセトンの合成原料としてまた溶剤として利用される。

[徳丸克己]


イソプロピルアルコール(データノート)
いそぷろぴるあるこーるでーたのーと

イソプロピルアルコール
  CH3CH(OH)CH3
 分子式 C3H8O
 分子量 60.10
 融点  -89.5℃
 沸点  82.4℃
 比重  0.7864(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.3771

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イソプロピルアルコール」の意味・わかりやすい解説

イソプロピルアルコール
isopropyl alcohol

化学式 (CH3)2CHOH 。イソプロパノール,2-プロパノールともいう。プロピレンと硫酸から合成するほか,糖蜜の発酵によっても生成する。工業的には石油分解ガスから分離したプロピレンを原料として生産される。引火性のある無色揮発性液体で,沸点 82℃。水に溶け,また水と共沸混合物をつくる。多くの有機溶媒に溶ける。酸化によって容易にアセトンに変るので,アセトンの合成原料として用いられる。イソプロピル化剤,凍結防止剤や溶剤などにも多く使われるほか,分析用の弱い還元剤,非水溶媒滴定の溶剤などにも使われる。医薬品として薬局方に収載される。蛋白質,リポイドの変性を起す作用によって殺菌効果を示し,消毒薬としてエタノールの2倍の効力をもつ。作用非選択性のため内用には用いられず,皮膚,手術器具の消毒や化粧品の溶剤に利用される。消毒薬としては,破傷風菌や炭疽菌のような芽胞産生菌には無効といわれる。

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