日本大百科全書(ニッポニカ) 「TUI」の意味・わかりやすい解説
TUI
とぅい
TUI AG
ドイツの旅行会社。前身はドイツの大手鉄鋼・機械メーカーのプロイサーグPreussag AG。1990年代後半の事業構造の大胆な革新により、ヨーロッパ域内で旅行会社の積極的な買収を行い、その中核業務を旅行事業部門としたことに伴って、2002年6月現名称に社名を変更した。本社所在地はニーダーザクセン州ハノーバー。
[風間信隆]
プロイサーグ
プロイサーグは1923年プロイセン政府所有のルール地方以外の鉱山・製鉄会社を統合して誕生したが、1929年にプロイセン政府所有の鉱山・電力会社を統合してVEBA(フェーバ)(現エーオン)が設立されたときにその一部となった。第二次世界大戦後、VEBAが解体された際に、炭鉱・原油採掘を行う国有会社として独立したが、1959年に株式会社となり、政府保有株式の売却により民営化された。その後、鉱石、石炭、石油等の輸送事業を行うVTGを買収するなど多角化を推進し、1989年に鉄鋼・機械メーカー大手のザルツギッターSalzgitterの全株式を買い取り、しだいに鉄鋼、エンジニアリング、造船、エネルギー、建設、物流などのコンツェルン(複合企業)となった。1995年の売上高250億マルクのうち、鉄鋼部門(12%)、エネルギー部門(9%)、物流部門(48%、金属取引を含む)、機械・造船部門(19%)、建設部門(11%)、その他(1%)という事業構造で、その連結子会社の数は225社(国内122社、海外103社)からなる一大企業グループを形成していた。
[風間信隆]
旅行会社への転換
その後、1990年代なかばにコア・ビジネスを旅行事業部門に求めるリストラクチャリング(経営再構築)を行うことを決定し、積極的なM&A(合併・買収)により同事業の拡大を図ってきた。グループ内の非主力事業と位置づけた鉄鋼・鉱山会社、エネルギー会社、電力会社などを積極的に売却する一方、売却資金を元手に1997年にはドイツの旅行会社大手ハパクロイドHapag-Lloyd AG、TUIなど国内の旅行業者を矢つぎばやに買収し支配下に置いた。その後数年の間に、イギリスのトーマスクック・グループやトムソン・トラベル・グループ、オーストリアのGTTグループやマジックライフ国際ホテル運営会社、スウェーデン、フランス、ポーランドやトルコの旅行会社などを買収して急速に多国籍化を推し進めた結果、ヨーロッパ旅行市場の90%のシェア(2002)を握るEU(ヨーロッパ連合)最大の旅行会社となった。2002年6月プロイサーグから現社名に改称した。2001年の連結子会社数は509社、連結売上高は224億1000万ユーロであった。
2008年時点で、グループの主要3部門は、TUIトラベル、TUIホテルズ・アンド・リゾーツ、ハパクロイド・クルーズだが、子会社のハパクロイド社が保有する128隻のコンテナ船による海運事業も行っている。2008年の売上高は249億0800万ユーロ、売上高構成は旅行関連事業が75%、コンテナ輸送事業が25%、総資産は167億0500万ユーロ、従業員数は7万0254人である。
[風間信隆]