内科学 第10版 「Vogt-小栁-原田病」の解説
Vogt - 小栁 - 原田病(急性散在性脳脊髄炎)
概念
両眼性の急性ブドウ膜炎に,網膜剥離,無菌性髄膜炎,内耳障害による感音性難聴,皮膚や毛髪の色素脱失を伴う疾患で,メラノサイトに対する全身性自己免疫疾患である.
病因・疫学
網膜はじめ全身のメラノサイトのチロシナーゼ関連蛋白を抗原とする自己免疫反応が原因である.日本人ではBehçet病に次ぐブドウ膜炎の原因疾患で,女性に多く30歳代に発症のピークがある.アジア人,ヒスパニックに多い.
臨床症状
しばしば感冒様症状に引き続く急激な視力低下,頭痛,耳鳴り,めまい,感音性聴力低下,発熱,悪心,無菌性髄膜炎などが生じる.その後,頭髪や眉毛,睫の色素脱失,白斑,脱毛などもみられる.
検査成績
髄液中の単核球増加,蛋白増加,ときにメラニン貪食マクロファージが出現する.日本人ではHLA-B54,HLA-DR4,HLA-DR53との強い関連がある.
診断・鑑別診断
眼底観察,光干渉断層計OCT,蛍光眼底造影検査で,虹彩炎,脈絡膜炎,網膜下の多発性漿液貯留と網膜剥離がみられる.脈絡膜の色素脱失による夕焼け状眼底,視神経乳頭の浮腫もみられる.無菌性髄膜炎と聴神経障害の有無を確認する.橋本病(慢性甲状腺炎)などほかの自己免疫疾患を伴うことがある.
治療・予後
ステロイドのパルス療法,大量漸減療法を行う.再発例にはシクロスポリンなどの免疫抑制薬を試みる.[犬塚 貴]
■文献
Pan D, Hirose T: Vogt-Koyanagi-Harada syndrome: review of clinical features. Semin Ophthalmol, 26: 312-315, 2011.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報